アイヌ遺骨の収集、日本人類学会が初の謝罪 研究目的で1700体以上
日本人類学会(会長、海部陽介・東大総合研究博物館教授)は15日、過去に一部の研究者が行った遺骨収集や保管、研究のあり方がアイヌ民族を傷つけてきたとして、「真摯(しんし)に反省し、心よりお詫(わ)び申し上げる」とする声明を発表した。
アイヌ遺骨の収集を巡っては、社会や文化を研究する日本文化人類学会が2024年に謝罪声明を発表したが、より直接的に遺骨を研究資料として扱い、アイヌ民族と和人(アイヌ民族に対し日本の大多数を占める人々)との違いなどの研究を担ってきた日本人類学会が公式に謝罪するのは初めて。
人類学会は、生物としてのヒトを形態や進化、人種など集団の違いから研究する「自然人類学」の研究者を中心に構成される。前身を含めて1884(明治17)年に設立され、その後、遺跡から発掘した物的資料を研究する考古学や、文化人類学が派生する母体となった。
明治期以降、アイヌ民族は人類学の研究対象とされ、頭骨の形や大きさの比較などを目的に大量の遺骨が収集された。中には副葬品などと共に盗掘同然に墓から持ち去られたケースもあった。また、研究資料として動物の骨などと一緒に扱われるなど、尊厳を軽視した扱いが長く続いた。
文部科学省によると、国内の大学や博物館などに保管されたアイヌ遺骨は1700体以上にのぼり、子孫たちが1980年代から返還を求めてきた。国は18年に返還ガイドラインを策定。子孫や地域のアイヌ団体への返還と、国立慰霊施設(北海道白老町)への移管が進められている。
日本考古学協会も15日、人類学と連携して調査研究してきた歴史的経緯などを謝罪する会長声明を公表した。また文化人類学会を含む3学協会長が連名で、アイヌ民族に向けられるヘイトスピーチに反対する声明も発表した。「誤解・曲解した研究成果がヘイトの『学術的根拠』として利用されている」として「他者に対する不当な誤解や偏見を正し、差別を是正するために努力していく」と強調した。【三股智子】
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