「卑弥呼の鏡」3面、富雄丸山古墳出土と確認 「被葬者は重要人物」

2026/01/30 17:00 

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 奈良県天理市の天理大学付属天理参考館所蔵の三角縁神獣鏡(さんかくぶちしんじゅうきょう)3面が、奈良市の国内最大の円墳、富雄丸山古墳(4世紀後半、直径約109メートル)の出土品であることが科学分析で確認された。同古墳はヤマト王権が配布したとされる「卑弥呼の鏡」三角縁神獣鏡が3面も副葬されていたことになるため、30日発表した奈良市教育委員会と天理参考館は「被葬者は王権の重要人物」としている。

 富雄丸山古墳は2022年度以降の調査で国内最大の蛇行剣や類例のない盾形銅鏡、別の三角縁神獣鏡1面などが出土したが、これは墳丘すそに埋葬された人物の副葬品。今回の3面は主被葬者が葬られた墳頂部の埋葬施設の副葬品で、古墳の性格を強く物語る。3面は天理参考館が1955年に古美術商から購入。明治時代以前に盗掘されて古物市場に出回っていた品とみられ、「伝富雄丸山出土品」とされていた。

 今回の調査は神獣が刻まれた鏡背面でなく鏡面に着目。奈良市教委が25年度、デジタルマイクロスコープで分析したところ、3面とも赤色顔料のベンガラ(酸化鉄)を使って研磨した痕を発見。同じ研磨痕は墳頂部から19年に出土した斜縁神獣鏡からも確認されており、副葬前に一緒に鏡を手入れした痕とみられる。また3面のうち1面の鏡面に残るだ円形の金属痕が富雄丸山古墳出土の銅板(京都国立博物館所蔵)の形と一致。この2点から奈良市教委と天理参考館は「3面が富雄丸山古墳副葬品であることが確実になった」としている。

 三角縁神獣鏡は3世紀末の王墓、桜井茶臼山古墳(桜井市、全長204メートル)から26面出土しており、ヤマト王権が大陸から入手するなどして一括管理していたとみられている。

 福永伸哉・大阪大名誉教授(考古学)は「富雄丸山の勢力は王権に重視されて3世紀後半に鏡を配布されたが、このころは『非主流派』。約100年後に王権で重要な地位を占めるようになり、保管していた鏡を副葬したのだろう」と話している。3面は天理参考館(0743・63・8414)に常設展示されている。【皆木成実】

 ◇三角縁神獣鏡

 鏡背面に神獣像の造形があり、縁の断面が三角の大型鏡。古墳時代前期に全国の古墳に副葬され、300面以上が見つかっている。小林行雄・京都大名誉教授(故人)が同じ鋳型で製造された同笵(どうはん)関係に着目して多数の出土鏡を分析し「畿内勢力(ヤマト王権)が従属の証として地方勢力に配布した」とする説を提唱。古代中国の魏の年号のある鏡もあり、魏志倭人伝の「卑弥呼が鏡100枚を贈られた」という記述から邪馬台国畿内説に基づき「卑弥呼の鏡」と呼ばれる。

毎日新聞

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