<View+>鳥とともに鳥と対峙 街の暮らし守る鷹匠の仕事

2026/02/07 17:00 

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 貨物自動車が行き交うトラックターミナルで、1人と1羽が静かに上空を見つめている。視線の先にはカラス。鷹匠(たかじょう)との呼吸が合った瞬間、放たれたタカは大きく翼を広げ、一直線にカラスへと向かって行った。

 ごみ荒らしやフン害などをもたらすカラスやハトは、都市部を中心に「害鳥」として警戒されている。その対策としてタカを使った追い払いを行っているのが大阪に拠点を置く害鳥防除会社「グリーンフィールド」だ。

 一般的に捕獲や駆除に使われる罠は便利だが、長く使えば害鳥が学習し、効果は薄れていく。その点、タカは違う。害鳥が本能的に恐れる「天敵」そのものだからだ。タカが空を舞うだけで、鳥たちは安心して過ごせる場所を失う。騒音が出ない上、追い払うだけなので鳥にけがをさせることもない。理想的な方法に思える。

 しかし、害鳥対策の現場はそんなに単純ではない。「ただ飛ばすだけでは何も変わらない」。2011年の会社設立当初から鷹匠として現場に立ち続けてきた岡村憲一さん(64)はそう話す。

 鳥が同じ場所を訪れる理由は一つではない。巣があるのか、餌があるのか、安全な遊び場だと学習しているのか。理由を見誤れば、タカを見て一度は逃げたとしても、やがて戻ってくる。

 そこで岡村さんは、まず相手の観察から始める。鳥の動き、現れる時間帯、周囲の環境。すべてを判断材料に目的を見極め、タカとともに適切な対応を取っていく。経験と知恵が成す職人技だ。

 「最初は継続的な害鳥対策がなかなかうまくいかなかった」と振り返る。ノウハウもなく、思うように成果が出ない日々。それでも「相手は生き物。思い通りにいかないのは当たり前」と現場で経験を積む中で、少しずつ「鳥の考え方」が見えるようになってきた。

 生き物と向き合う難しさは害鳥に対してだけではない。パートナーのタカもまた生き物。一羽ごとに性格は異なり、成長の仕方も違う。鷹匠の休日でも訓練と世話は欠かせず、中でも最も神経を使うのがタカの体重管理だ。軽すぎれば思うように飛べず、重すぎれば餌に意識が向かず集中力を失う。ビルの隙間(すきま)や屋内を飛ぶので、わずかな判断ミスが事故につながりかねない。

 現場によって飛行距離も回数も異なるため、その日の仕事を遂行しながらも、明日の仕事、その先の予定を見据えながら餌の量や運動量を決める。刻一刻と変わる環境に対応する策を考え続ける思考力が求められる。

 鳥とともに鳥と対峙(たいじ)する仕事。「大変なことはありますが、うまく追い払いができたときの達成感は大きいですよ」。岡村さんは今日もどこかで街の暮らしを守っている。【長澤凜太郎】

毎日新聞

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