「スニーカーOK」 働きやすさでサービス向上へ 変わる航空業界
もうヒールのパンプスには戻れない――。
客室乗務員や空港内で働く係員は立ち仕事が続き、足の疲れ、むくみに悩まされてきた。
変革に動き出した航空業界。背景にあるのは、働きやすさや多様性を重く見る姿勢だった。
大阪国際(伊丹)空港では1日350回以上にわたり、航空機が発着している。糺(ただす)亜緒衣さん(31)はここで日本航空の地上旅客係員として働いている。
搭乗締め切り時刻になっても姿を見せない乗客を捜し回り、車椅子の乗客を手助けする。1日の歩数は多くて1万2000歩。パンプスでは土踏まずやつま先だけでなく、腰も痛くなるほどだった。
そんな悩みが和らぐようになったのは2025年11月。日航はグループ会社を含む約1万4000人を対象とし、従来のパンプスに加え、スニーカーの着用を選べるようにした。
早速スニーカーを履いて働く糺さん。「足の疲れが全然違う。パンプスには戻れない」と喜ぶ。
日航グループ・ジェイエアの客室乗務員、渡里(わたり)奈美さん(38)は14年前の入社以来、ヒールがあるパンプスで働いてきた。
「ふくらはぎが重く、翌朝まで疲れが残る日もあった」と振り返る渡里さん。スニーカーを選べるようになり、「入社した時には想像できない大きな変化」と驚いたという。
それは日航では長らく、パンプスが「当たり前」になってきたからだ。
運航を開始した2年後となる1953年の規定では「女性の客室乗務員の靴は革製で、中ヒール2寸4分の1(6・8センチ)のパンプス」と定められていた。
それから約70年の間で、靴の規定は何度か見直されてきたが、大きく変わったのは20年だった。
これまで「3センチ以上」としてきたパンプスのヒールの高さについて、客室乗務員、地上旅客係員ともに「0センチ」も可能とした。
見直しの議論でスニーカーを求める声が出たものの、「ビジネスシーンでの着用は一般的でない」とされ、実現しなかった。
くしくも同じ年、「靴はスニーカー」とする格安航空会社(LCC)が現れた。成田空港を拠点とする「ZIPAIR Tokyo(ジップエア トーキョー)」だ。
20年の就航時から採用しており、「動きやすい」「足がむくんでもパンプスほど疲れない」と乗務員の評判は上々。この取り組みは後に「スニーカーベストドレッサー賞」の特別賞に選ばれた。
同じ頃には、職場でのパンプスの強制に反対する「#KuToo」が話題を呼び、徐々にスニーカー着用を認める航空会社が出てきた。
日航社内でも「スニーカー着用を認めて」とする要望は絶えなかった。「チャレンジングな取り組み」と位置付け、スニーカーを選べるようにしたのが3カ月前だった。
厚底や華美なデザインはNG。「制服になじむデザイン」との原則を大切にし、黒の単色のみ認めている。
スニーカー着用は、柔軟な働き方や多様性を求める社会の流れと軌を一にしている。日航は「社員の業務内容や体調、好みに合わせた働き方を実現する。社員が生き生きと働ける環境を整えることがお客さまへのサービス向上につながる」と説明している。【中村宰和】
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