<「公益通報」を問う>12県警が5年間で公益通報ゼロ 「あり得ない数字」と専門家

2026/02/24 05:00 

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 全国の12県警が2020~24年度の5年間、警察官や一般職員からの公益通報を一件も受けていなかったことが、毎日新聞の調査で判明した。通報件数が5年間で1件だけだったのも7府県警に上った。

 大半の警察は数千人の職員がおり、専門家は「この規模で通報がゼロなのはあり得ない。制度が機能していないことを意味する」と指摘する。多くの警察で公益通報制度が形骸化している実態が浮かんだ。

 ◇職員2万人超の大阪府警もたった1件

 公益通報は、勤務先の不正に気づいた職員らが通報し、調査や是正につなげる制度。通報先は、勤務先に伝える「内部通報」と、監督官庁や報道機関などに告発する「外部通報」に分かれる。

 毎日新聞は25年11~12月、内部通報件数や通報制度の周知方法などについて47都道府県警にアンケートを実施。通報窓口となる各警察の監察部門にも取材した。

 その結果、5年間で内部通報件数が0件だったのは青森、福島、新潟、長野、滋賀、和歌山、鳥取、島根、福岡、佐賀、長崎、沖縄の12県警。1件のみだったのは7府県警で、職員数が全国2番目に多い2万人超の大阪府警も含まれる。この19府県警で全都道府県警の4割を占めた。

 ◇消費者庁「職員が通報に不安の可能性」

 通報件数別では、1~5件が18警察▽6~10件が8警察▽11~50件が5警察▽51~100件が3警察▽101件以上が1警察。なお、千葉、石川、奈良、広島、愛媛、鹿児島の6県警は20年度のデータを保存期間外としており、21~24年度の4年間の数字となる。

 通報件数が最多だったのは広島県警で173件。次いで兵庫県警83件、愛知県警63件、警視庁62件と続いた。

 通報件数が比較的多い警察は、組織トップの本部長や担当部署が定期的に通報を促すメッセージを出したり、通報の心理的・手続き的な負担を減らすために外部窓口や専用の通報フォームを設けたりしているところが多かった。

 各警察の警察官と一般職員の合計人数(25年4月時点)の中央値は約3500人。消費者庁が民間企業を対象にした23年度の調査では、従業員3000人超の企業367社で1年間の内部通報件数が0件だったのは2・2%。1~5件だったのは8・2%にとどまり、警察の通報の少なさが際立つ。

 消費者庁参事官(公益通報・協働担当)室は今回の結果に関し、1年間の通報件数が一件もない場合は「多くの職員が通報に不安を感じている可能性がある」としている。

 公益通報制度に詳しい淑徳大の日野勝吾教授は「通報件数が少ないのは、通報後の不利益を懸念したり、通報しても適切な調査・是正が行われるのか疑心暗鬼になったりしていることが理由ではないか。内部通報制度の実効性は、組織に自浄作用があるかどうかにかかっている」と指摘した。【遠藤浩二】

 ◇内部通報

 職員や従業員が勤務先の窓口に不正を通報すること。公益通報者保護法は全部で三つの通報ルートを定めており、内部通報の他に、監督官庁や行政機関への通報、報道機関や消費者団体といった外部機関への通報があり、この二つを「外部通報」と呼ぶ。内部通報によって組織が自浄作用を発揮することが期待されているが、不正の有無を調査しなかったり、通報者に報復したりするケースが後を絶たない現状がある。

毎日新聞

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