大船渡山林火災から1年 注目集める森の再生、住宅再建に課題も

2026/02/26 16:23 

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 岩手県大船渡市の大規模山林火災は26日、発生から1年を迎えた。平成以降の林野火災で国内最大の3370ヘクタールが焼失し、1人が死亡、建物226棟が焼損した。地元では造林に向けた準備作業が始まり、住宅の再建も今後本格化する見通し。一方、被害の甚大さから、どこまで復旧するかは不透明だ。

 ◇「きちんとした森に戻したい」

 三陸町綾里地区の山林では、東京の造林業「青葉組」が植林前の「地ごしらえ」と呼ばれる作業を始めた。

 青葉組は国内3カ所で造林事業を進める。大船渡では2025年8月に事務所を開設し、所有者から焼損した山林を買い取ったり、管理を請け負ったりする形で計110ヘクタールの再生を担う。

 この日は、2人の所有者から管理を受託した約2・2ヘクタールで作業に着手した。針葉樹の杉林だった斜面に広葉樹のコナラとウリハダカエデの苗木計2200本を植えるため、作業員3人が斜面に残った枝を片付けたり、枯れ草を刈ったりした。

 苗木は地ごしらえや鹿の食害対策の後、4月中旬~5月中旬の予定。中井照大郎社長は取材に「全国で山林火災が相次いでおり、大船渡での作業は注目されると思う。きちんとした森に戻したい」と語った。

 焼損木の伐採や造林は業者と所有者の個別契約の他、大船渡市が全額公費で実施する森林災害復旧事業がある。市は現在造林計画を策定中で、事業の開始は4月以降となる見通しだ。

 森林災害復旧事業は天然林を除く人工林約1700ヘクタールが対象。市が25年秋に実施した山林所有者への意向調査では、45%超に当たる約780ヘクタールの所有者が利用を希望した。半面、所有者が希望しない場所は放置される可能性が懸念されている。

 ◇自宅復旧に数千万円以上、重い負担

 一方、山林火災で被災した建物は公費解体が昨年末で終了した。このうち住宅は90棟で、元の場所以外に再建する人や経済的な負担の大きさが明らかになっている。

 岩手県立大の杉安和也准教授(地域防災)らの研究グループは昨秋、半壊以上の56世帯を対象に被害や再建に関するアンケートを実施し、27世帯から回答を得た。

 再建を希望する場所は「元の自宅と同じ」が8世帯で最も多く、次いで市内の別の場所が7世帯、元の自宅と同じ地区が2世帯で、未定も8世帯あった。 被害額と年収の比較では、年収の2倍以上の世帯が20世帯と4分の3を占めた。復旧費用は、3000万~5000万円と5000万~1億円が3分の2の18世帯だった。

 杉安准教授は「元の場所以外で再建する人の中には、住んでいた場所が土砂災害特別警戒区域のため家を建てられないケースがある」と指摘。今回の火災の教訓として「火災保険や火災共済への加入を更に進めると共に、保険金でカバーしきれない被災に備えた貯蓄も検討すべきだ」と提言する。【奥田伸一】

 ◇岩手県大船渡市の大規模山林火災

 2025年2月26日午後1時過ぎに大船渡市赤崎町合足(あったり)地区から119番があった。極度の乾燥と強風で燃え広がり、消火作業は難航した。鎮火は4月7日で、焼失面積は市全域の1割弱に及んだ。農業や水産業などの被害額は102億円超に上る。

毎日新聞

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