知床沈没事故 被告社長、「記憶にない」繰り返す 安全管理問われ
北海道・知床半島沖で2022年、観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」が沈没して乗客乗員全26人が死亡・行方不明となった事故を巡り、業務上過失致死罪に問われた運航会社「知床遊覧船」社長の桂田精一被告(62)に対する公判が3日、釧路地裁(水越壮夫裁判長)で開かれた。運航管理者だった被告が「記憶にない」を繰り返し、口ごもることも多い中、検察側は安全管理体制を追及した。
被告は、事故で死亡した男性船長(当時54歳)と事故当日午前10時の出航前に話し、船が本来折り返す「知床岬」よりも手前で引き返して正午までに港に戻ることが共通認識だったと主張したが、事前に折り返し地点を明言したかは「明確な記憶がない。最終的に船長判断」とした。
検察側は確実ではない天気予報とともに実際の気象や海象を確認しなかったのかを指摘。その日は知床岬方面や、桂田被告が折り返し地点の一つと想定した海域から漁師らが引き返していた。カズワンは単独運航したが、桂田被告は「(彼らの意見は)聞こうと思わなかった」と語った。
漁師らがなぜ戻ったと思うか問われると「いちばん荒れるところだから」とした。だが、「予報で(航行に影響がないと)確認が取れた」とし、予報への信頼感を繰り返し口にして、日常的にそう対応していたと説明した。午前10時前に発表された波浪注意報を認識した後、改めて予報を確認したかについては10秒ほど沈黙し、「影響を受けないと認識したと記憶している」と絞り出した。
一方、検察側は事故発生4日後の22年4月27日の正午過ぎに、桂田被告が自身の記者会見を前に「2カ月は大変(な状況)だと思うが、また何か大きな事件が起きたら収まります」とのメッセージを妻にLINE(ライン)で送信していたことを明らかにした。
当時は捜索活動が行われ、カズワンが出航した北海道斜里町ウトロ地区周辺には報道陣なども詰めかけた。事態が収拾するとの趣旨とみられ、桂田被告は「心配させないように」と意図を説明した。妻への連絡から数時間後の会見では、会場で土下座などをした。【谷口拓未】
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