女性の4割「誘い受けた」 セクハラ起きやすい放送業界の構造とは

2026/03/03 20:35 

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 放送業界で起きているセクシュアルハラスメントの実態について、研究機関が実施した調査結果が3日、発表された。元タレントの中居正広氏によるフジテレビの元アナウンサー女性への性暴力を認定した第三者委員会の調査報告書が公表されてからまもなく1年となるが、フジテレビだけの問題にとどまらないセクハラがはびこりやすい業界構造が浮き彫りになった。

 ◇顕著なジェンダーの偏り

 調査はメディアやジェンダーを研究する東京大学大学院情報学環の田中東子教授の研究室と、評論家の荻上チキさんが代表理事を務める一般社団法人「社会調査支援機構チキラボ」が共同で実施した。

 社員、フリーランスなど雇用形態を問わず放送局で働いた経験のある人を対象に、メールやオンライン、SNS(交流サイト)による公募型調査として、2025年5月~26年1月の期間で回答を収集した。内容の信頼性も担保した上で、有効回答者183人分の内容を分析した。

 その結果、女性回答者119人のうち約4割が「性的な関係の誘いを受けた経験がある」と回答。また、約1割は不同意性交を含む重大な被害を経験していた。男性回答者は62人で、性的な誘いを受けた経験は1人、重大な被害は該当者がなく、ジェンダーの偏りが顕著だった。

 具体的な事例としては、入社後に上司から個室に呼び出され「膝枕してくれない?」「今夜泊まらせて」「お風呂に一緒に入りたい」などと言われた▽番組出演者からメールでホテルに誘われることが頻繁にあった。断るたびに2人きりになった際に「なぜ行かないのか」と尋問され、時々たたかれた――などとの回答が寄せられた。

 被害は心身の健康や生活にも深刻な影響を及ぼしている。「何らかのセクハラ・パワハラ被害にあった」と回答した152人からは「通院や服薬をした」(56人)、「眠れなくなった」(39人)、「自殺を考えた」(39人)といった訴えが寄せられた。

 ◇背景にある権力勾配

 問題が起きる背景にある業界的構造も明らかになった。自由記述の回答には「なぜ性加害に従わざるを得なかったのか」について説明したものが多かった。それらを分析すると①上司と部下、先輩と後輩といった組織内の明確な権力勾配が存在する②断ると取引停止や、出演者の機嫌を損ねて番組収録などが滞る可能性がある③性被害を回避したり周囲に相談したりすると、現場から外されるなど加害者から報復を受ける――という三つの類型に大別された。

 また性的な冗談やからかい、食事やデートに執拗(しつよう)に誘われるなどの行為が続くうちに次第にエスカレートし、自宅に入り込まれて性暴力を受けるなどの重大な被害に至ったケースもあった。田中教授は「メディアという公共性を担う組織体の内部で、性暴力やハラスメントといった重大な人権侵害を放置しているのは大きな矛盾だ。性的な冗談といった『小さな』加害や被害から深刻な事案につながる。そうした行為を見逃さない職場環境を作るため、研修内容を徹底することなどが重要だ」と指摘している。【町野幸】

毎日新聞

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