働き方改革は効果あった? 上限まで働く人「そもそも少ない」指摘も
厚生労働省が5日発表した、労働者と企業を対象にした労働時間に関するニーズ調査によると、労働時間を「減らしたい」と回答した労働者は全体の3割に上った。働き方改革関連法が施行されて5年以上たつが、改革の一環で導入された時間外労働の罰則付き上限規制は、実際に労働者の労働時間を減少させたのだろうか。中央大の阿部正浩教授(経済政策)はその効果に疑問を投げかける。
時間外労働の罰則付き上限規制は、大企業では2019年4月から、中小企業では20年4月から適用された。現在の上限は原則月45時間、年360時間。繁忙期など特別な事情がある場合は、過労死の労災認定基準に基づく「月100時間未満」「複数月平均で80時間以内」に制限されている。
総務省の労働力調査によると、15歳以上の平均労働時間は18年には158・4時間だったのが、新型コロナ禍の20年に150・9時間になった。その後も減少傾向は続き、25年には149・0時間まで短縮した。
だが、阿部教授がリクルートワークス研究所の「全国就業実態パネル調査」を用いて分析したところ、上限規制の導入が平均労働時間に与えた影響はみられなかった。分析では上限規制の導入時期が異なる大企業や中小企業、上限規制の適用外の労働者を比較。働き方改革関連法施行直後の19年に大企業の労働者の労働時間が施策によって短縮した可能性があるが、その効果は13・2分にとどまった。
阿部教授は「上限規制は長時間労働の是正を目指した制度。上限にかかるほど長時間働く人はそもそも少なく、全労働者の平均労働時間の短縮には結びつきにくい」と指摘する。さらに、上限規制にかかる週50~60時間以上働く人を対象にした分析でも、長時間労働の是正効果は確認されなかった。
労働力調査では、フルタイムにあたる週35時間以上働く人は19年の4346万人から25年に4178万人に減少。一方、週15~34時間のパートタイム労働者は、19年の1649万人から25年には1773万人に増加した。阿部教授は「近年の労働時間短縮の背景には、コロナ禍による働き方の変化や、比較的労働時間が短い高齢者や女性労働者の増加があるのではないか」とみる。
阿部教授は「働き方改革後も、労働者の感じる精神的負担には大きな改善が見られないという研究結果もある。時間の長短だけでなく、やりがいや納得感も含めて、働く環境の『質』をいかに高めるかという視点も忘れてはならない」と指摘した。【塩田彩】
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