「恩返ししたい」 二つの被災地つなぐカフェ 震災15年節目に開店

2026/03/07 07:45 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 二つの被災地をつなごう――。 

 岩手県釜石市の岩鼻伸介さん(48)が、東日本大震災から15年となる11日、石川県七尾市の集会所とオンラインで結ぶカフェを地元に開店する。岩鼻さんは能登半島地震の避難所にキッチンカーで通い、住民にコーヒーを振る舞ってきた。末永く絆を深めようと店舗を構えることにした岩鼻さんは「復興までずっと関わり続けたい」と語る。

 岩鼻さんは2011年3月11日の震災当時東京に住んでおり、仕事中に激しい揺れに襲われた。釜石の両親は無事だったが、実家は津波で全壊した。翌年に帰郷し、キッチンカーによる喫茶店を開店。週末に岩手県内のイベントに出店するなど幅広く営業している。

 岩鼻さんは震災で釜石を訪れたボランティアに感謝の念を抱き続けてきた。24年1月に能登半島地震が起きると「あの時の恩返しをしよう」と決心し、キッチンカーで片道800キロを運転して現地入り。避難所でコーヒーを無料で手渡した。

 以来計21回、地震で被災した七尾市や石川県輪島市などに足を運んだ。仮設住宅の集会所などで計2万杯を提供し、地元住民の体と心を温めてきた。

 一方、釜石から能登半島はキッチンカーで片道十数時間かかり、何度も往復するのが肉体的にも経営的にも負担になってきた。このためオンラインで話し合える態勢作りを考える中で、常設の店舗が必要と判断した。

 開店するのは「ハピスコーヒー ラボラトリー」。能登とのオンライン交流やコーヒーフルコースなど新たな活動を探究する場にしようと、キッチンカーの屋号と「実験室」を意味する英単語を組み合わせた。

 店内にパソコンとモニターを設置し、何度も訪問した七尾市の仮設住宅そばの集会所と結ぶ。コーヒーフルコースはフランス料理を参考に、浅煎り、中煎り、深煎りのテイスティングやメインコーヒーなど5種類のメニューで構成する。カップの一部は能登半島の珠洲焼を使う。

 11日は石川県から珠洲焼のカップを作った知人が手伝いに訪れる。震災が起きた午後2時46分に黙とうをささげた後「あの日のコーヒー」と称して来店者に振る舞う。岩鼻さんは「これからはいつでも能登とやり取りできる。11日はコーヒーを飲みながら心ゆくまで語り合いたい」と話す。

 カフェは釜石大観音前の仲見世(なかみせ)通り。完全予約制で、ハピスコーヒーのホームページから申し込む。【奥田伸一】

毎日新聞

社会

社会一覧>

写真ニュース