三重の外国籍職員採用巡るアンケート 結果を5月にも公表へ

2026/05/01 08:30 

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 三重県が外国籍職員の採用取りやめを検討している問題で、県が判断材料とするため実施した「みえ県民1万人アンケート」の結果を5月中にも公表する方向で調整を進めていることが、関係者への取材で分かった。アンケートを巡っては、設問自体が差別的だとして結果を公表しないよう求める声も上がっており、県の判断に波紋が広がりそうだ。

 県では1999年度、一部の職種を除いて職員採用試験で国籍要件を撤廃。現在は49種中44種で外国人の採用が認められている。

 そんな中、一見勝之知事は昨年12月25日の記者会見で、「情報漏えいの観点」を理由に早ければ今年度の採用から要件を復活させる意向を明らかにした。

 県は1月26日~2月16日に実施した「みえ県民1万人アンケート」に国籍要件に関する質問を設け、結果を最終判断の参考にする考えだ。ただこのアンケートは対象が選挙人名簿から抽出され、外国籍の住民が含まれていなかったため、3月には伊賀市の男性がアンケートの業務委託費の支出差し止めを求める住民監査請求を提出。さらに4月、県内在住の在日朝鮮人3世の男性が「アンケートで不当な差別を受けた」として、「差別を解消し、人権が尊重される三重をつくる条例」に基づきアンケート結果を公表しないことなどを求める申し立てをした。県には4月27日時点で意見書が39件、電話やメールでの反対意見が127件寄せられている。賛成の声も267件あった。

 こうした状況の中、県はアンケート結果の扱い方を検討。ある県関係者は毎日新聞の取材に「公表する方針は変わらない」とし、時期について「5月末ごろだと思う」と明かした。また別の関係者は「5月中旬」とし、「一見知事はすでに結果を見ているが、この質問に関しては思ったよりも『採用を続けるべき』という意見が多く、今後の進め方を考えている段階ではないか」と話した。

 一見知事は4月28日の記者会見で「情報漏えいの可能性を限りなくゼロにするのが組織管理者の仕事」と改めて強調。アンケートの公表について「確定的なことは一切決めていない」としつつ、「情報公開条例で公開しないと決まっている情報にあたるとは思えない」と前向きな姿勢を示した。

 ◇「知事はなぜ今?」首ひねる関係者ら

 「私はやりますよ」。昨年12月、県が外国籍職員の採用取りやめを検討していることが報じられると、一見知事はある県議にこう言って決意を示したという。記者会見などでも実現に向けた思いを語っているが、県庁内でも疑問の声は多く、関係者たちは「なぜ今、この問題にそこまでこだわるのか」と首をひねっている。

 一見知事が強調するのが、国際情勢の変化に伴う「情報漏えいのリスク」だ。特定の国名は挙げていないものの、念頭には中国の存在がある。2017年に「国家情報法」が制定され、組織や個人に国家機関の情報活動への協力を義務づけられた。県によると、農業や防災など秘匿性の高い情報の流出を懸念しているといい、一見知事も記者会見で「公務員の守秘義務と、その国の法律の間で股裂きの状態になるのを放置しておくのが適切なのか」と話した。

 これまでに県は9人の外国籍職員を採用してきたが、情報漏えいが疑われる事案は発生していないという。ある県職員は「国籍でレッテルを貼っているように思える。これまで『多文化共生』を重視してきたのになぜ、と戸惑っている職員も多くいる」と明かす。

 一方、ある県議は「国籍要件を撤廃した99年とは状況が変わっており、知事の気持ちも分かる」と理解を示しつつ、「もっと他にやり方があったのではないか」と語った。

 別の県議はため息をつき、こう願った。「今回の問題は三重の社会を大きく揺るがす。差別を助長しない方向に進んでほしい」【長谷山寧音】

毎日新聞

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