「恩を返せた」重い雰囲気変えた山梨学院・鳴海の逆転打 センバツ
◇選抜高校野球1回戦(20日、甲子園)
◇○山梨学院5―1天理(奈良)●
三回まで安打はわずか1本。山梨学院は、天理のエース右腕・下坊大陸(りく)の変化球に手を焼き、捉えきれずにいた。1点を追う四回に1死から梅村団が左前打で出塁すると、重かった雰囲気が少しずつ変わった。
野選と内野ゴロで2死二、三塁として打席に入ったのは、8番の鳴海柚萊(ゆずき)だ。外角のコーナーを突かれながらもうまく見極め、2ボール、1ストライクとなった4球目。外角からやや内寄りの「自分が一番好きなゾーン」に入ってきた直球を逃さなかった。打球は左中間を抜ける二塁打となり、2点を奪って試合をひっくり返した。
鳴海は昨秋の関東大会で1番だったが、2試合で1安打にとどまった。「チームに迷惑を掛けてきた」という思いがあっただけにこの日は8番で結果を残し、「恩を返すことができてよかった」と胸をなで下ろした。チームは中盤から終盤にかけて3点を追加。鳴海の長打が攻撃の勢いを呼び込んだ。
山梨学院は2023年のセンバツで初優勝を果たし、前回も8強入り。前回のセンバツを経験している選手が多く、吉田洸二監督は前回のチームよりも「総合力でほぼ全て上回っている」と評する。
ただ、気がかりなことがある。吉田監督は「良い時と悪い時の差がある。あっさり負けたり、勝つ時は爆発力につながったり、よく分からない」。昨秋の関東大会では、1回戦で昨夏の甲子園8強の東海大相模(神奈川)に対し、好投手の福田拓翔から6点をもぎとって延長タイブレークの末に競り勝ったが、準々決勝では千葉黎明に序盤で主導権を握られて敗れた。
冬場には体作りに加えて守備力を強化し、サインの確認も徹底させるなどムラのないチームづくりを目指してきた。センバツ初戦でも見事に逆転勝ちしたが、吉田監督は「今日は勝った気がしないというか。非常に重く、自分たちの試合ができなかった」と厳しかった。
「甲子園はとにかく初戦が大事だと言われてきた」と鳴海。この1勝が爆発力につながるか。【吉川雄飛】
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