「全てやりきった」大活躍の横浜主将、心地よい疲労感 センバツ

2025/03/30 20:25 

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 ◇選抜高校野球大会決勝(30日、甲子園)

 ◇○横浜(神奈川)11―4智弁和歌山●

 横浜の阿部葉太はセンターの芝の上で優勝を見届けると、マウンド付近にできた歓喜の輪にゆっくりと加わった。

 「センバツをやりきった思いで、なんだか疲れてしまって……」

 甲子園に懸ける思いが一番強いと村田浩明監督が判断し、異例となる2年生の昨年5月から主将を務める。その3番打者は、決勝でも打って走って守っての大活躍。主将は心地よい疲労感に浸った。

 見せ場は、同点で迎えた三回1死二、三塁の打席。内角球を2球ファウルして追い込まれた。それでも外角高めの直球に対し、大谷翔平(ドジャース)に似た構えから体を開かずにノーステップで流し打った。

 左翼線にライナーで運ぶ2点二塁打。「ボール球だったが、なんとか食らいつけた」と振り返った。

 2回戦ではライナー性の一発を甲子園の深い右中間に放り込んだ左の強打者だが、磨いてきたチーム打撃を見失わなかった。昨春に低反発バットが本格導入されたことを受け、チームではフライを打ち上げず、広角に鋭いライナーを放つ打撃を模索してきた。大舞台で難しい球に反応できたのは、鍛錬のたまものだ。

 この適時打を含めて、4安打3打点に2盗塁もマーク。六回2死三塁の守備では、前に落ちそうな打球を頭から飛び込んで好捕した。後逸のリスクも承知の上で「思い切って決断した」。すべてにおいて「背中で引っ張る」との決意を体現した試合だった。

 閉会式。紫紺の優勝旗を受け取った阿部のユニホームは、胸の「YOKOHAMA」の文字の上に緑色が付いていた。六回のスーパーキャッチで甲子園の芝生の色が染みついていた。

 チームのために、やるべきことをやり遂げた春。ユニホームに輝く緑は、甲子園が球児に授けた勲章のようだった。【石川裕士】

毎日新聞

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