オブスタクル日本記録 久保樹さんが語る競技の魅力 「戦略が鍵」

2025/05/22 07:15 

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 全長100メートルのコースに設置された12種類の障害物(オブスタクル)を乗り越え、ゴールまで走り切ったタイムを競う「オブスタクルスポーツ」。高松市在住の久保樹さんは、4月19日に国内で唯一の公認コースがある徳島県吉野川市で開かれた世界選手権出場をかけた選考会で28・08秒の日本新記録で優勝した。

 オブスタクルスポーツは、TBS系のスポーツエンターテインメント番組「SASUKE(サスケ)」をベースにした米国の人気番組をヒントに生み出された。2028年のロサンゼルス・オリンピックから近代五種の一つの馬術に代わって採用される。18年には国際的な運営統括組織「国際オブスタクルスポーツ連盟(FISO)」がスイスで設立されており、日本では、一般社団法人「日本オブスタクルスポーツ協会(JOSA)」(東京都)が、24年から公式大会の開催などを行っている。

 中学時代から陸上競技に打ち込み、香川県立高校の教諭、陸上部顧問を務める傍ら、29歳の時には陸上の四国選手権に出場し、110メートル障害で優勝した経験もある。34歳からはクライミングも始めた。

 サスケファンの妻桃子さん(35)とともにJOSA公認のオブスタクルコースを訪れたのは24年6月。最初はアスレチックを楽しむだけのつもりだったが、「モンキーバー」(うんてい)や「ホイール」など、各障害物に挑戦していくうちにめきめき上達していき、その日のうちにタイムが1分を切った。スタッフからも「最初に1分を切るのはなかなかいない」と驚かれたという。自身も「クライミングで鍛えた腕力と、陸上競技で鍛えた脚力を使う競技で自分に合っているし、すごく楽しく感じた」と当時を振り返る。

 以降、オブスタクルにのめり込み、平日は地元高松市で、ジャンプやダッシュ、懸垂などで基礎体力を付けるトレーニングに汗を流す。毎週末には徳島に通い、有料で使用できる公認コースでライバルとともに技術を磨いている。「障害物一つ一つのクリアタイムより、障害物間のタイムをいかに縮められるかに重きを置いている」という。

 競技中は、ミスで失格になるリスクを承知で「大技で攻めてタイムを縮める」か、ミスをしないために丁寧に障害物を攻略し「タイムを犠牲に無難に切り抜けるか」の二者択一を迫られる。また、選手ごとにそれぞれの障害物の得手不得手もある。「どの障害物に勝負をかけるのか、一か八かの大技に賭けるのか、手堅く行くか……。身体能力だけではなく、戦略や駆け引きが勝負の大きな鍵になる」と競技の魅力を語る。

 9月には、出場権を得たほかの7人とともに、スウェーデンで開かれる「OCR世界選手権」に日本人として初めて挑戦する。「ずっと陸上競技をしていて、世界の舞台は憧れだったが、自分はそこに手が届く選手ではなかった。今回、世界に挑戦できてとてもにうれしい」と語り、ベストを尽くすことを約束した。【山本芳博】

 ◇久保樹さん

 高松市出身。香川県立高校の教諭などを経て、現在は同県教育委員会事務局に勤務している。保健体育課スポーツグループ体育主事として、スポーツの競技力向上サポートなどを担当している。人気バスケットボール漫画「スラムダンク」の大ファン。

毎日新聞

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