「金」狙う日本製鉄瀬戸内副主将は柔道阿部兄妹のいとこ 日本選手権

2025/11/05 07:00 

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 「あの花火のようなでっかいホームラン見せてや」

 社会人野球日本選手権大会に4大会ぶり18回目の出場となった日本製鉄瀬戸内(兵庫)の広田太陽選手(24)は10月中旬、いとこで柔道のオリンピック金メダリストの阿部詩(うた)選手(25)から激励された。大阪市の「なにわ淀川花火大会」で夜空に咲く大輪の花を見上げ、広田選手は「絶対打つから」とうなずいた。

 ◇「名前をとどろかせたい」

 チーム3年目で、ホームページの自己紹介欄では、今年の意気込みを表す漢字に、全国にその名を轟(とどろ)かせたいと「轟」を選んだ。

 高い目標を掲げる姿勢は大学2年の時、詩選手の兄で柔道のオリンピック金メダリストの一二三(ひふみ)選手(28)からかけられた言葉から生まれた。

 「達成できる目標だと、そこがマックスになってしまう。自分は高校生の時に『オリンピック優勝』を目標に掲げた。『スタメンを取る』だけだと、そこで終わってしまうよ」

 ◇予選では本塁打

 今春、副主将になり、「単なるレギュラーではだめだ」と飛躍を誓った。

 バットを思い切り振り抜ける力をつけようと、ウエートトレーニングを重ね、瞬発力、体幹を鍛えた。練習が功を奏し、「びっくりするぐらい(打球の)飛距離が出るようになった」と話し、米田真樹監督も「スイングが速くなった」と成長を認める。

 6月の都市対抗近畿地区2次予選の第3代表決定戦で「公式戦では人生初かも」という先制ソロホームランを放ち、チームの本大会出場に貢献。

 1ボール2ストライクから甘い変化球を捉え柵越えを見届けると、2度、3度と人さし指を突き上げた。

 都市対抗予選では7番だった打順も、日本選手権予選からは3番を任されるように。9月の近畿地区最終予選の3回戦では右越えの先制ホームランを含む2安打3打点の活躍をみせるなどチームに欠かせない存在となっている。

 ◇目標は優勝

 今年の都市対抗でチームは、1回戦のさいたま市・日本通運戦を接戦で制したものの、2回戦は東京都・鷺宮製作所に零封負けした。

 その悔しさもバネにして臨んだ今回の日本選手権。今大会の目標を「ズバリ優勝(金メダル)」と掲げ、5日の1回戦でJR東海(愛知)と対戦した。

 試合は九回に追いつき延長タイブレークに突入。2点を追う十回裏1死一、三塁の場面で大きな花火を上げるチャンスがやってきた。一発出れば逆転サヨナラ勝ちだったが、セカンドゴロに終わった。1点は返したものの、後続が抑えられ敗れた。試合後、広田選手は「まだまだ2人(阿部兄妹)の域には到達できていない。同じレベルになれるようこれからも頑張りたい」と笑顔を絶やさず、前を向いた。【関谷徳】

毎日新聞

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