Jリーグクラブで初 J3福島が「PRIDE指標」でゴールド獲得

2025/12/20 09:45 

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 サッカーJ3の福島ユナイテッド(福島市)は、LGBTQなど性的少数者への企業や団体の取り組みを評価する「PRIDE指標」の最高評価「ゴールド」を獲得した。Jリーグクラブでは初めてで「これを機に地域に多様性や包摂性の大切さを伝えるモデルになれれば」と意気込む。

 PRIDE指標は一般社団法人「work with Pride(ワーク・ウィズ・プライド)」(東京都渋谷区)が2016年に始めた。頭文字が「PRIDE」になる▽行動宣言▽当事者コミュニティー▽啓発活動▽人事制度・プログラム▽社会貢献・渉外活動――の5項目の指標で、性的少数者が働きやすい職場かを評価し、5点満点だとゴールドを獲得する。今年は931社から応募があり、計750社がゴールドに認定された。

 福島ユナイテッドでは、出生時の戸籍の性別と性自認が異なるトランスジェンダー男性と公表している中田彩仁(さやと)さん(32)が中心となって今年、職場環境を整備した。

 高校時代は走り幅跳びでインターハイに出場。一橋大大学院でスポーツ社会学を研究し、コンサルタント会社を経て「スポーツを通じて社会課題を解決したい」と2021年8月、福島ユナイテッドなどのクラブを運営する「スポーツX」(京都市)に入社した。

 福島には今年から勤務。スポーツXを創業した小山淳・福島ユナイテッドCEO(最高経営責任者)からは「自分は日本一、性的少数者に詳しい経営者になりたい」と言われ、PRIDE指標への挑戦を後押しされた。

 同性パートナーを法律婚の配偶者と同等に扱う社内制度を整備し、福島ユナイテッドのホームページに「D&I」(多様性と包摂性)のコーナーを設けて差別禁止などの「行動宣言」を明文化した。中田さんが県内の教育機関や企業に出向いて研修や講演を行い、地域への浸透にも力を入れる。また10月26日のホーム戦は「人権啓発スペシャルマッチ」と銘打ち、LGBTQの当事者の体験を伝えるブースを開設するなど精力的に活動を展開し、高く評価された。

 中田さんは、5項目の中でも啓発活動を重視。社内の従業員に向けた研修で「組織の風土はすぐには変わらないので、自己開示をしながら自分も相手を理解して尊重することを心掛けて、回数を重ねて啓発を進めた」と言う。「サッカークラブはただ勝つだけの組織ではなく、人を育てるインフラ。福島ユナイテッドが、地域全体で多様性を受け入れるハブになってほしい」と願っている。【錦織祐一】

毎日新聞

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