<リンクサイド>羽生結弦さん 東日本大震災15年、新演目へ語った思い
フィギュアスケート男子でオリンピック2連覇を果たしたプロスケーター、羽生結弦さん(31)が座長を務め、東日本大震災の被災地から発信するアイスショー「羽生結弦 notte stellata(ノッテ・ステラータ)2026」が7日、宮城県利府町のセキスイハイムスーパーアリーナで開幕した。2023年から4年連続の開催。9日までの3日間、公演を通じて被災地から「希望」を届ける。公演後の羽生さんとのやり取りは次の通り。【倉沢仁志】
◇「15年、理解しながら進んできたつもり」
<メンテナンス期間を経て、久しぶりに公の場で演技して>
もうすごい緊張しました。なんですかね、やっぱこの緊張感というか、期待をすごく浴びながら。で、それに応えたいという気持ちがものすごく強く、強くあふれていたので、自分の手足が本当に震えるほど緊張はしたんですけれども。思いも、そして技術もちゃんと込めて滑れたかなと思います。
<震災から15年ですけれども、どういう思いで演技しましたか>
15年たって、自分自身の悲しみや傷への向き合い方だったり、付き合い方であったり、そういったことをちょっとずつ理解しながら前に進んできたつもりです。この15年という時があったからこそ、今、逆にその傷に向き合おうという気持ちも出てきたり。逆にあれがあったからこそ、今こうやって学んで生きているんだ、強く生きているんだ、ということを何か表現したいと思って、(新演目の)「Happy End(ハッピー・エンド)」は特に振り付けを自分でしていきました。
<被災地への思いは、この15年でどんな変化がありましたか>
なんか大きく変わったなということは正直、自分の中ではないです。15年っていうのは、ある意味で、何か人間的には5の倍数って節目を感じやすい数字ではあるんですけれども。確かに福島、宮城もそうですし、岩手も復興が進んだところは進んだし、コミュニティーが復活しているところもあると思います。
ただ、そのまま取り残されている地区だってありますし、復興してきたよっていう中にも、中身をのぞいてみたら全然復興していないというか。元に戻るわけではないので。そういった意味では、ずっとずっと応援し続けたいなという気持ちと、自分自身も被災した傷、トラウマみたいなものもやっぱり、ずっとずっと抱え続けていくべきなんだなっていうことを、理解して付き合えるようになったかなとは思っています。
<新演目の「ハッピー・エンド」に込めた思いは>
まあ、めっちゃ苦しいっていう感じです。ひたすら。僕自身が持っているプログラムの一つで、天と地のレクイエムっていう楽曲があるんですけど、それはどちらかというと、その震災に直接気持ちを寄せて、当時のがれきの道であったりとか、あとは空港の周りの車とかがれきがいっぱい積んであるような道を見渡しているような光景みたいなことを表現しながら、そこに一つの魂が、みたいな感じで思っていたんですけど、今回は自分自身の体がむしばまれていったりとか、もちろん坂本龍一さんの曲なので、やっぱりこの曲を書いた当初が、やっぱりその、ずっと病にむしばまれていた頃だったとお聞きしていたのもあって、何か自分が、震災という傷であったりとか、被災地、宮城県、仙台もそうですけど、ちょっとずつちょっとずつ、復興は間違いなくしてるんですけど、ちょっとずつ残っている傷痕であったりとか、僕自身がアイスリンク仙台で滑る時に残っているその壁の傷であったりとか、補修されているけれども見える傷みたいなものを少しずつ感じながらで、それにまたむしばまれながら、自分が苦しんでるけれども、最終的にはその傷も全部自分なんだって受け入れながら、演技が終わった後に次があるよって思えるようなプログラムにはしたつもりです。
◇メンテナンス期間を終えて…
<充電期間を経て新たな発見はありましたか>
やっぱり体の動きをいろいろ勉強してきたんですけれども、いかにその我流で今までやってきたのかっていうことを改めて発見しました。フィギュアスケートって本当に人気はある競技ではあるんですけれども、実際やっている人口が多いかと言われたら、そんなに多いスポーツではないですし、また、その科学的な根拠のある研究っていうものがたくさんあるかと言われたら、そんなこともないです。そういった研究的には未開発なスポーツの中で、どれだけ根拠のない練習と根拠のない技術を身につけてきたっていうのを、改めて実感しました。ちょっとずつですけれども、本当にそんな長い期間やってたな、長い期間、そのメンテナンスをできてたわけではないので、ほんのちょっとかもしれないですけれども、そのフィギュアスケーターとしてだけじゃなくて、そのスポーツに携わる人間、またダンスに携わる人間として、こういう体の使い方をしなきゃいけないっていう基礎の『キ』ぐらいはちょっと学んでこれたのかなっていう気はしています
<震災を知らない世代っていう人も増えてきている中で、羽生さんとして今後どんな形で続けていきたいですか>
実際に今回コラボレーションさせていただいた東北ユースオーケストラの方の中でも、震災後に生まれたよっていう方もいらっしゃるし、震災当時まだ幼くて記憶がないよっていう子もきっといらっしゃって、そういった子たちがきっと、坂本龍一さんがこうやって募ったおかげでずっとずっときっと復興であったりとか震災のこと考えて過ごしていると思うんですよね。そういったことと同じで、僕も当時16歳でしたけれども、やっぱり何かいろんなインタビューをしていただいたりとかいろんな記事を書いていただいたりする中で、僕もやっぱり伝えるべき立場として頑張っていかなきゃいけないというか使命があるんだっていうことを、何かしらその当時、若いながらに何か使命を帯びたような気がしてたんですね。
そして、今いろんな各地の、能登であったりとか、大船渡もそうでしたけれども、熊本であったりとか、本当に、その東日本大震災だけじゃなくて、その後に起きた災害の地域にも行ったところ、やっぱりあれがあったから防災の意識が変わって、守られた命もきっとあって、守られた生活もあって、そういったことが伝わっているからこそ、どんどんどんどん減災っていうものは続いていくんだなっていう風に思ってるんですよね。
だからこそ、僕らもその当時を知っている人間だからこそ、どんどん世代が若くなっていくし、生まれ変わっていくし、新しい命も芽吹くけれども、そこにこんなことがあったんだよって、こんなことがあったからこういう風に守るっていうことを学んだんだよっていうのはずっと(言い)続けていきたいなと思います。
<新演目でもう一曲「八重の桜」を選んだ理由と込めた思いを教えてください>
まず、コラボレーションさせていただく中で、東北ユースオーケストラさんが弾きたい曲、弾ける曲っていうラインアップの中で、まずいっぱい聴いて選ばせていただいた中の一つです。僕自身、「天と地と」というプログラムをフリースケーティングの最後のプログラムとして選んでいたんですけれども、何かそれの続きとして、「八重の桜」というものを演じたいという気持ちがありました。実際、大河で使われている楽曲ではあるんですけど、その大河の内容自体にはそんなに干渉はしていなくて、どちらかというと僕自身が「天と地と」を滑り終わり、このステージに立って、どういう風になんかこれからの人生を生きていきたいか、そして、最終的に僕が演技として、スケートとして、氷の上、皆さんの人生の轍の中に何かを残してこれたかなっていうようなイメージで、最後一つ一つ思い出を置いていくみたいなイメージで作りました。これはデイビット・ウイルソンと一緒に作らせていただきました。
<ハッピー・エンドの振り付けの中で、重視した部分は>
ダンス要素を増やしたなっていう感じはしています。あとは、何か体の使い方の話もすごくしてましたけれども、体の使い方の理論がわかっているからこそできる、その連動性であったりとか。
実際ボクサーじゃないですけど、ボクサーのすごい強い人のパンチって、すごい綺麗に体が動いていて、で、その曲線美って綺麗なものがあるんですよね。それと同じように、きっと僕らのその身体表現っていう部分においても、理にかなっているからこそ、人間として綺麗だよねっていう動きがきっとあるなって思って、そういうのをひたすら、なんだろう、感情の土台としてなんか入れてったイメージがあります。
平昌オリンピックの後に、その表現って、芸術って、技術が基礎にあるよねっていう話をちょっとさせていただきましたけど、改めてそのメンテナンス期間を経て、その感情を乗っけるためには、やっぱりこういう技術的なこととか基礎的なことがあるから、その上にやっと感情が乗せられるんだなということに気づきながら、一つ一つ丁寧に作ったプログラムではあります。
<スピンを多用していました>
何かスピンをステップの中に入れきっちゃうというか、スピンと演技の境界線をなくすっていう気持ちもありました。
<メンテナンス期間にダンスの基礎的なことをやったのでしょうか>
踊る練習の方が多かったですかね。でも、座学的なことも。結局、体の使い方という、いわゆるスポーツ的な考えの方の座学はすっごくやりました。実際にそのトレーニングの手法をいろいろ考えたり変えたりとかしてみたり、フィギュアスケートに何が合うのかなっていうことを考えたりとか、そういう期間でした。
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