「政治的影響から守りたい」 ミラノ・パラ閉幕 各国選手らの思い
15日に閉幕したミラノ・コルティナ冬季パラリンピックでは戦火が続く母国に思いを寄せ、心を痛めながら大会に臨んだ選手たちの姿があった。混沌(こんとん)とする世界情勢は「平和の祭典」にも暗い影を落とした。
「この勝利を今まさにロシアとの戦争によって命を落とし、苦しんでいる人々にささげる」。ウクライナのオレクサンドラ・コノノワ選手は、ロシアも出場したノルディックスキー距離の混合リレーで銀メダルを手にすると力強く言い切った。
ウクライナ勢はバイアスロン男子7・5キロ(視覚障害)で表彰台を独占するなど、金3個を含む19個のメダルを獲得した。
コノノワ選手は「私たちの旗を掲げ、ロシアの旗を絶対に掲げさせないために持てる力の全てを出し切った」と胸を張った。
ウクライナ侵攻を続けるロシアと同盟国ベラルーシの参加を巡っては、国際パラリンピック委員会(IPC)が2025年9月の総会で資格停止処分を解除し、各国際競技団体(IF)の定めた基準を満たすことで国の代表として出場が認められた。
組織的なドーピング問題もあったロシアにとって、国旗や国歌の使用が許可されるのは14年のソチ大会以来12年ぶり。選手たちの思いはひとしおだった。
ソチ大会、18年平昌大会も経験しているアルペンスキー男子立位のアレクセイ・ブガエフ選手は、今大会で計3個のメダルをとった。「再び自国を代表し、メダルを獲得できてうれしく思う。何かに制限されたり隠したりする必要がなく、ありのままの姿でいられることはいいことだ」と万感の思いを口にした。ロシア勢の金は8個で、国・地域別のメダル獲得ランキングで3位につけた。
一方で、ロシアとベラルーシの出場について、ウクライナ選手からは「納得できない」「ショックだ」と不満の声が相次いだ。
反発は他国にも広がった。6日の開会式では、ボイコットを表明したウクライナに同調する形で、欧州6カ国が参加を見送った。ロシアに隣接するバルト3国のラトビアもその一つ。車いすカーリング代表のポリナ・ロズコワ選手は「民間人の住宅への爆撃で人々が死んでいる状況で、ロシアに自国旗での出場を許可するのは正しいのか疑問だ。公平ではない」と憤った。
大会中もウクライナ・パラリンピック委員会はIPCに抗議声明を提出。選手が「STOP WAR」と書かれたイヤリングを外すように求められたり、選手団の宿舎に掲げた国旗を外すように求められたりするなど「組織的な圧力」をかけられたと訴えた。
ウクライナ選手団は閉会式にも参加しなかったが、IPCは「政治的理由で欠席すると正式に通知してきた国内パラリンピック委員会(NPC)はない」と説明した。
開幕直前には米国とイスラエルがイランへの攻撃を開始。国連総会で採択された「五輪休戦決議」は2大会連続で破られた。イランの選手は安全に渡航できず出場を断念したが、米国とイスラエルの選手たちは予定通り参加した。イスラエルのアルペンスキー女子立位、バスピ・シェイネ選手は「イランの選手には心から申し訳なく思っている」と言葉少なだった。
混迷を深める世界情勢がつきまとった冬季パラリンピック。閉会式前の記者会見で総括を求められたIPCのパーソンズ会長は「私は会長として、選手を政治的影響から守りたいと考えている」と述べるにとどまった。閉会式では大会の成功を強調し、10日間の祭典は幕を閉じた。【コルティナダンペッツォ下河辺果歩、遠藤龍】
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