犠飛か「ドカベンプレー」か 瞬時の判断、最適解は センバツ
◇選抜高校野球大会1回戦(22日、甲子園)
◇○九州国際大付4―3神戸国際大付●
犠飛を狙うか、「ドカベンプレー」に懸けるのか――。
昨秋の明治神宮大会決勝の再現となった1回戦屈指の好カードで、高度な選択と判断を瞬時に求められる場面があった。
九州国際大付が1点リードで迎えた五回の攻撃。1死一、三塁の好機で4番の城野慶太が放った打球は右翼への浅い飛球となった。ベンチからはヒットエンドランのサインが出ており、一塁走者は飛び出していた。飛球を捕球した神戸国際大付の右翼手・山城颯音(そう)に一塁へ送球され、併殺が完成した。
得点の有無は、三塁ベースにリタッチして犠飛を狙った三塁走者の柴原奈旺芙(なおふみ)の本塁到達と、「第3アウト」の成立のどちらが早いかの競争になった。
際どいタイミングとなり、一度はスコアボードに得点を示す「1」が刻まれたものの、球審が両腕で「×」のポーズを作って第3アウトの成立が先だと判断した。得点は認められず、グラウンド整備に入った。
試合後、九州国際大付の三塁コーチを務めていた伊藤颯馬は振り返った。
「(三塁走者は)足が速い柴原なので浅い打球でもタッチアップできると思いました。でも、終わってみれば、一塁走者が飛び出していたので、柴原には犠飛を指示せずに本塁へ行かせてもよかったですね」
俊足の柴原に犠飛を狙わせれば、右翼手の一塁送球よりも先に生還できる可能性があると判断したが、期待した結果にはならなかった。それならば、一塁送球よりも先に本塁に触れることを優先し、三塁へのリタッチをさせずにそのまま本塁突入を指示する選択もありだったと言うのだ。
これは、野球のルールを定めた公認野球規則にある、守備側の「アピールプレー」を巡る解釈の盲点を突く考えだ。
仮に九州国際大付の三塁走者がリタッチせず本塁に進んでいた場合、守備側の神戸国際大付は一塁送球後でも、選手たちが引き揚げてファウルラインを越える前に三塁にボールを送り、三塁走者がリタッチしていないとアピールする必要がある。
三塁に送球せずベンチへ引き揚げれば、得点が認められるからだ。
第94回全国高校野球選手権大会(2012年)の2回戦の済々黌(熊本)―鳴門(徳島)戦では同様のプレーがあった。この時は守備側の鳴門の選手がそのままベンチに引き揚げ、このルールを利用した済々黌が得点している。
このアピールプレーは野球漫画「ドカベン」でも描かれたことがあり、当時は「ドカベンプレー」として話題になった。
九州国際大付の三塁コーチの伊藤は中学時代にこのルールによって得点を許した苦い経験があったという。「それで1点入って負けちゃったんです。そういうこともあったなと思い出しました。次も強い相手と対戦するので、競った場面で冷静に判断できるようにしていきたい」と気を引き締める。
一方、神戸国際大付の右翼手の山城も「そのルールは本で読んだことがあり、頭に入っていた。プレーする前に外野手で状況判断を確認していた」と明かす。もしも九州国際大付がリタッチせずに仕掛けてきたら「アピールしていた」と語る。
優勝候補による延長十一回タイブレークにもつれた一戦は、技術だけでなく、頭脳の上でもハイレベルだった。【長宗拓弥】
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