将来550万kW分の原発建て替え必要に? 革新軽水炉4~5基分

2025/10/17 21:14 

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 電力大手10社でつくる電気事業連合会の林欣吾会長(中部電力社長)は17日の定例会見で、今後想定される電力需要の伸びに対応するため、2040年代に発電容量550万キロワット分の原子力発電所の建て替え(リプレース)が必要になる可能性があるとの見通しを示した。開発が進められている革新軽水炉(約120万キロワット強を想定)に建て替えるのであれば4~5基分に相当するという。

 林会長は地元理解と安全運転が大前提としつつ、「原発の(建て替えにかかる)リードタイムを考えると、もう待ったなしの状態にあるのは事実」と語った。政府が第7次エネルギー基本計画(エネ基)で示した公的な信用の付与や政府信用を活用した融資などを具体的に求めていくとした。

 脱炭素化に資する電源の開発を支援する「長期脱炭素電源オークション」にも改善の余地があり、「稼働までの設備投資をどう負担していくかという点も要望していきたい」とも述べた。

 電事連が1日、建て替えが必要になる規模を経済産業省の原子力小委員会で政府側に説明していた。第7次エネ基では、40年度の発電電力量が最大1・2兆キロワット時まで伸びると想定しており、原発はその2割程度を担う電源構成を目指している。電事連は既存の原発の稼働率を7割と仮定し、見通しとの差分を機械的に算出したところ、約550万キロワット分が必要になる可能性が示された。

 林会長は約550万キロワットの建て替え案を「(国と)議論するための出発点」と説明しており、建て替え候補や必要となる基数は今後、国側との協議で具体化させる見通し。電事連によると、運転開始から60年を迎える既設原発のほか、廃炉が決まった原発や同じ電力会社が持つ他の原発敷地内での建て替えが想定されるという。

 国内では現在、関西電力が美浜原発(福井県)の敷地内での建て替えの検討に向けた地質調査を、11月に再開する計画を発表している。1号機(34万キロワット)を革新軽水炉に建て替えるのであれば、40年代に必要な約550万キロワット分のうち約90万キロワットを補えることになる。

 ただ、全国をみると、稼働中の原発は110万キロワットのものもある。廃炉完了までに30から40年程度かかることを考えると立地の少ない日本で40年代までに実現できるかは疑問が残る。化石燃料の脱炭素化や再生可能エネルギーの導入をより積極的に進める必要がありそうだ。【中島昭浩】

毎日新聞

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