ハイスタ難波、“新潟ラーメン名店”浅草進出の理由 私財投じても「僕は『なみ福』からお金は得…

2025/06/04 07:30 

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Hi-STANDARD/NAMBA69の難波章浩 (C)ORICON NewS inc.

 パンクロックバンドHi-STANDARD/NAMBA69の難波章浩が、地元新潟の角田浜にラーメン店「なみ福」をオープンしたのが2022年9月。近年老舗の“後継者不足”による閉店が相次ぐなか、自身のソウルフードだと語る新潟の名店「楽久」の味を守るため自ら手を挙げ、その味を引き継ぎ、さまざまな苦難を乗り越え、多くの人が訪れる人気店へと成長させてきた。そんな同店が6月9日、東京・浅草に新店をオープンする。なぜ浅草だったのか、なぜ多額の私財を投じてこのプロジェクトを推進するのか。そして自身の2つのバンドを含む音楽活動への思いとは。難波がORICON NEWSに本音を語る。【独占インタビュー前編】

【写真】透き通ったスープが特徴的…看板メニューの「ラーメンチャーハンセット」

■浅草出店の理由

 難波は今年2月、自身のSNSで「なみ福浅草プロジェクト」を発表。「僕たちは本気で『なみ福の優しい味を世界に届けたい!そして新潟にもっと来てもらいたい』と思っている」と意思を表明し、東京・浅草での店舗オープンすることを公言した。そもそも、なぜ浅草だったのだろうか?

 「小さいころから結構移住をしていたんですよ。19歳でハイスタを結成して、30歳で活動休止後、沖縄に行くんです。その後38歳のときに、故郷の新潟に戻るか、東京にいくか。その時に家族の介護もあって、新潟に戻るんです。でもHi-STANDARDやNAMBA69の活動もあって東京での仕事も多くて。新潟と東京は近いんで、2拠点で生活を始めて。その2拠点目が、実は浅草だったんですよ」

 新潟と浅草を行き来する生活を15年続けるなかで、「浅草でオープンしたい」という思いは高まっていったという。

 「『なみ福』をやりはじめて、もっとやらなきゃいけないことがたくさんあったんでしょうけど、『いつか東京で、浅草でなみ福をやってみたい』という思いは(新潟角田浜本店を)オープンした直後くらいからあって。それである日、浅草を散歩しているときに出会ってしまったのが、この店舗だったんです。ただただ、かわいい建物だなって。古い古民家だったんですけど」

■築60年のお寿司屋さんに難波の“直感”が反応

難波の目に留まった築60年の古いお寿司屋さん。しかも営業を終えて十数年の月日が経っており、建物は朽ちていたというが、難波にはある思いが去来したという。

 「今、浅草がどんどん新しくなってっちゃって、すごい古いこういういい感じのところにビルが立っていて。浅草は地元ではないけど、この場所立て替えられちゃったりしたらなんか悔しいなと思ってて。それでたまたま行きつけの(『なみ福』の近所の)洋食屋さんに『あの建物どうなんですかね?』って聞いたら、『あそこ、幼なじみだよ』って言われて紹介していただいて。(2店舗目はまだ)早いかなと思いながら、『今しかない』と思って、腹をくくりました」

 新潟角田浜本店の店舗に選んだのも、築50年の浜茶屋(海の家)。店の味だけでなく、長く新潟・浅草の街を支えてきた店舗でその味を届けたいという共通点があった。昨秋に出店を決め、そこからの準備の日々を難波は「めちゃめちゃ苦労しました(笑)」と笑うが、想像以上に困難を極めた。

 「まず店舗を作るのが本当大変でした。めちゃめちゃ時間も押したしね。全ての柱を直すぐらい(店舗の)中を開けたら本当にすごい状態だったんで。そして配管やインフラ全て全部掘り返して作り替えて。昨年11月に契約して約8ヶ月で建物を作るのが本当大変でしたね。
 そして浅草店で作ってくれる人たちとの“出会い”が大変でした。夜営業のことを考えると、ラーメンと炒飯(を作る人が)それぞれ2人ずついないといけない。4人、本当に魂を分けられる人と出会わなきゃいけない。裏切らない人と出会う。そこは本当に1番難しかった」

 建物、人との出会いをなんとか1つずつクリアにしていくなかで、最後に難波に立ちはだかったのが「水」だった。

「水が全然違ったんですよ。新潟ってめちゃくちゃやっぱ水うまいんですよ。なんでうまいかって話で、水を研究して。水研究するのなんて初めてだったんですけど(笑)。新潟は軟水で、東京は硬水が多いんですよ。だから東京の水で作った時に、新潟で作った味にならなくて。そこで『どうしよう』って」

 いろんな可能性に思いを巡らし、難波はある浄水器に出会う。

 「1回全てのカルシウム・ミネラルをはじめ、不純物を取ってしまうすごい浄水器があって。本来の水の状態にして、そこから成分を加えて、新潟の成分に水を近づける。新潟より、うまいじゃんって言われたいですし。それがあって、(取材日の)3日前にようやく完成しました」

■”クラウドファンディング”への思い

難波は、このプロジェクトを推進していくにあたり、クラウドファンディングで支援者を集めた。前回の新潟角田浜本店オープン時には、2000万円以上の支援を得たが、一方で、これまであまり公にしてこなかったが、多額の私財を投じている。

 「僕も新潟を愛するひとりとして、『皆さんも新潟を愛してますよね?』『新潟ってすごくいいですよね?』って思ってくれる人が、他にはないあの味を守ろうとしている僕に共感してくださるなら、『僕と一緒にいきませんか?』というのがテーマなんですよ。もちろん、皆さんから授かるお金=気持ちを僕は背負って一緒にいきたいんですよ。皆さんと一緒に。そして2200万円という多大なるご支援をいただいて、角田浜の店舗ができたんです。その金額は、建物のリノベーションに当てさせていただきました。実はそれでも足りなくて。金額あまり言いたくないんですけど、トータル4500万円以上かかっていて。その(足りない部分は)部分を全部背負ったんです。ただ、クラファンも自分が投じたのも、建物に関することだけ。『運営費赤字です』なんて言ってたら、そんなことはお願いできないです」

 さらに難波は、お金について驚きの事実を明かした。

 「実は、このなみ福プロジェクトの活動する上で、僕は報酬を得てないですよ。僕は(会社の)社長、代表で、ぶっちゃけ朝から晩までめちゃくちゃ働いてますけど、役員報酬を受けない。僕はこの『なみ福』からお金は得ないって決めてるんですよ。それは、クラウドファンディングでお金を支援してくれている人たちと同じ立場になりたかったから。(出している)金額は多いですけど、それは僕が言い出したことだし。皆さんと同じ立場になってこのまま行きたいですし、今後ずっと決めてることで」

 今回、浅草店出店にあたっても、クラウドファンディングを実施(6月18日まで)しているが、そこにも思いがあるという。

 「今回2回目のクラウドファンディング、『2回目やるの?』ってきっと皆さん思われたと思います。でも僕は、皆さんと一緒にいきたい。この建物をリノベーションするのに、3500万円以上かかっているなかで、僕もお金持ちじゃないから、そんな出せないんですよ。『どの面下げて2度目のクラファンやるんだ』って自分でも思ったんですけど、皆さんの支援をいただいていて。今回も建物の修繕だけに使わせていただいて、足りない部分はもちろん自分でかぶりますし、返礼も自分にできることを全力でやる。それで浅草にお店をだして、スタートする。『難波とだったらなにか面白いことできるんじゃないか』と思っていただけるとしたら、それに応えてここに来てくださった方が『ナンチャンに投じて、支援して良かったな』と思ってもらいたいですね」

 なぜそこまでこのお店にこだわるのか、その原動力にある難波の想い、さらにHi-STANDARD/NAMBA69を含む、音楽活動についてはインタビュー後編で赤裸々に語っている。
ORICON NEWS

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