「第26回東京フィルメックス」受賞結果発表 北村匠海主演、内山拓也監督『しびれ』に審査員特…

2025/11/30 10:14 

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「第26回東京フィルメックス」授賞式の記念写真

 アジアを中心に世界から新進気鋭の監督たちの作品を集め、どこよりも早く、注目作品の上映を行う国際映画祭「第26回東京フィルメックス」(11月21日~30日)。最終日を前に29日にクロージングセレモニーが東京・有楽町朝日ホールで開催され、コンペティション部門10作品から各賞の発表が行われた。

【画像】審査員特別賞を受賞した『しびれ』内山拓也監督ほか

■最優秀作品賞はローハン・パラシュラム・カナワデ監督『サボテンの実』

 インド・ムンバイで育ち、独学で映画作りを学んだカナワデ監督にとって初の長編作品。サンダンス映画祭ワールド・シネマ・ドラマ部門のグランプリ受賞作品。

 都会で暮らす主人公アナンドは、父の逝去に伴う10日間の服喪儀式のため、故郷の村へ帰省する。農村の伝統と親族からの結婚圧力に直面する彼にとって、幼馴染のバリヤとの再会を経て、彼と親密な時間を過ごすことが、次第に唯一の逃避場所になっていく。

 監督の授賞式への登壇はかなわなったが、滞在先の米ロサンゼルスから喜びのメッセージが届いた。「たった今『サボテンの実」が最優秀賞を受賞したと、すばらしい知らせを聞きました。私はちょうど明日から映画の公開のためロサンゼルスにいるのですが、受賞の知らせにとても喜んでいます。審査員のみなさん、選んでいただきありがとうございます。この栄誉を謹んでお受けします。この作品を上映くださりありがとうございます。観客の皆さんが、この映画で私たちの作品の体験を楽しんでいただけたらと願います。映画祭、審査員、観客のみなさん、ありがとうございます!」

 受賞理由について、同映画祭は「抑圧と宗教的厳格さに特徴づけられる社会のなかで、二人の青年が繊細な距離を縮めていく姿を描いた作品です。この旅路は、繊細な脚本と緻密な映像言語によって導かれ、この作品の静かなささやきは、誰もが自由に呼吸できる世界への力強い叫びへと昇華しています」とコメントしている。

■審査員特別賞は内山拓也監督『しびれ』

 『佐々木、イン、マイマイン』(2020年)で鮮烈な印象を残した内山拓也監督が、自身の故郷である新潟県を舞台に挑んだ4作目の長編作品。

 主人公の母親は夜の仕事に従事し、男に貢いで尽くすという自滅的な愛の形しか知らず、結果として息子へのネグレクトを繰り返していた。また、少年時代に同居していた父親に抗えなかった時間が、彼から文字通り「声」を奪い去ってしまい、彼はその「沈黙」を抱えたまま、その後の人生と向き合うことになる。物語は少年が離散した父親との再会を経て、過去の痛みに向き合い、自身の「声」を取り戻すまでの魂の救済の旅路を追う。

 主人公・大地の青年期を北村匠海が演じ、水商売で稼ぐ母を宮沢りえ、暴君のようだった父を永瀬正敏が演じるほか、少年期の大地は榎本司、加藤庵次、穐本陽月の3人が担当。雪に覆われた新潟の景色そのものが、もうひとつの登場人物として物語を支える。

 内山監督は授賞式で「全てのスタッフ、キャストの美しい仕事を誇りに思っています。また、これまで私の人生に携わってくれた全ての方々に感謝申し上げます」と述べ、「この映画は私の個人的な経験に根差している映画で、田舎の貧困層に生きる1人の少年の姿を映し出しながら、経済的なことのみならず、社会のあらゆる階級に生きる心の貧困の存在、その存在に光をあて、祝福することを目指しました。国内外問わず、さまざまな状況下の中であらゆる方々が生きていると思うけれども、そういった方々が心穏やかに映画を楽しめる世の中に少しでもなることを心から願っています」と作品に込めた思いを語った。

 審査員特別賞は、バランス感覚を体現する作品が選考のポイントとなった。「沈黙と家庭内暴力に満ちた人生を凍える空気の中で呼吸しながらも、撮影される身体の動きから独特の温もりを引き出す映画です。荒削りでありながら感動的な本作の感情は、不確実性を受け入れる過激な映像的視点から生みだされています。それは呼吸を、遠くにそして近くに、静寂と変化の中で、柔らかくそして硬く、わたしたちに生き延びる姿を共有させてくれます」と評価した。

■アレクサンドレ・コベリゼ監督『枯れ葉』に学生審査員賞&スペシャルメンション

 前作『ジョージア、白い橋のカフェで逢いましょう』で世界的な評価を確立したジョージアの俊英コベリゼ監督の3作目の長編作品。この作品の最も特異な点は、全編が2010年代前半の古い携帯電話のカメラで撮影されていることで、そのローファイな映像を通して浮かび上がる、幽玄で美しい田舎の景色は、次第に過去と現在の境界を曖昧にし、観客を現実と魔術的リアリズムが混在する世界へと誘っていく。

 物語は、ジョージアの田園地帯を舞台に、娘リサの突然の失踪の謎を追う父イラクリの捜索の旅を追う。旅の相棒は、なぜか姿が目に見えないリサの友人レヴァニ。手がかりを求めて地方を彷徨(さまよ)う過程で、二人はさまざまな風景や見知らぬ人々に出会う。

 コベリゼ監督も登壇がかなわなかったが、ビデオメッセージで喜びを明かした。「学生審査員のみなさん、ありがとうございます。私自身少し前まで学生だったので大変光栄です。卒業したのは2020年前ですから5年前です。今も学生時代とは何も変わっていません。映画について何か知っているという気がしています。ある意味学生のように映画について学び続けています。ですからよいつながりだと思います。そして若い人たちが私の作品を気に入ってくれたのはよかったです。ありがとうございます!」

 学生審査員からも「ローファイな映像によって絵画のように形や色が立ち上がる美しさ。その中に存在する人、動物、車が奥行きを感じさせる。何かが映っている、動いている、それを見ることが映画なんだと思わされました」とコメントした。

 また、学生審査員賞に続いてスペシャルメンションの発表を受けたコベリゼ監督は「まず、私の映画をこの映画祭で上映していただきありがとうございます。これはうれしい恒例になってきました。もし次回作がフィルメックスで上映されることになれば、今度は私もその場に行けるように願っています。もちろん、審査員のみなさんスペシャルメンションありがとうございます。光栄です。みなさん良い夕べを!」とメッセージを寄せた。

 選考理由としては「この作品の独創性と探究精神に深く感銘を受けた。独自の創造的視点、詩的な映像言語、そして瞑想的ともいえる物語の語り口によって、本作は映画がもつ純粋な魅力を提示してくれている」としている。

■観客賞はツォウ・シーチン監督『左利きの少女(原題)』

 シングルマザーとその2人の娘が、生活再建のために台北の夜市で麺屋台を始める。反抗的でありながらも将来への不安や焦燥を抱える長女と、祖父に「悪魔の手」と言われたために利き手である左手に罪悪感を覚える幼い次女。彼女たちがそれぞれの困難や誘惑に直面しながら、家族の絆を保とうともがく姿を描いた活気ある人間ドラマ。

 台湾系アメリカ人のツォウ・シーチン監督は、ショーン・ベイカーと『テイクアウト』(2004年)を共同監督した後、プロデューサーとしてベイカーの諸作品に関わってきており、本作が単独での監督デビュー作となった。また、ベイカーはこの作品においては脚本、編集、プロデュースを務めている。本作は今年のカンヌ映画祭の批評家週間にて初披露され、「第98回米国アカデミー賞」国際長編映画賞への台湾代表作品にも選出されている。

 シーチン監督も登壇がかなわなかったが、ビデオメッセージで映画祭とそして、作品の選んだ観客たちへ「この物語は台北での思い出から生まれました。東京でも共感していただけたことに、心から感謝しています。どうもありがとうございます」と喜びの気持ちを伝えた。

 授賞式の記念写真(左から)神谷直希(プログラムディレクター)、ラモン・チュルヒャー(国際審査員)、Glenn BARIT(タレンツ・トーキョー・アワード受賞者)、内山拓也監督(審査員特別賞『しびれ』)、マティアス・ピニェイロ(国際審査員)、ソン・ファン(国際審査員)
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