広がる「サナ活」 バッグは9カ月待ち だけど注意すべき「その先」

2025/11/30 08:00 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 <サナエとおそろだ><親近感持てる。サナ活でバッグ買っちゃいました><ペンかわいい。私もサナ活したい>

 高市早苗首相が10月に就任して以来、交流サイト(SNS)で高市首相の持ち物を「特定」して買い求めたり、ゆかりの場所を訪れたりする「サナ活」が盛んに行われている。

 就任から1カ月が過ぎた今も高市内閣の支持率は高止まりしている。推し活は政治家の「人気」や「支持」にどのような影響を与えるのだろうか。

 ◇特定班が躍動

 「ロゴも入っていないのによく『特定』していただけたなと。高市さんがお持ちとは存じ上げなかったが、うちのものとお見受けしてうれしい限りです」

 そう話すのは、浜野皮革工芸(東京都渋谷区)の広報担当を務める小林孝典さんだ。

 30年来の人気ナンバー1商品「グレースディライトトート」がSNS上でバズっていることに気づいたのは、首相指名から2日たった10月23日夜のことだった。

 官邸に入ってくる際、高市首相が黒色トートを手にしていた映像から「特定」されたとみられ、直後からオンラインストアにはアクセスが殺到し、翌日には在庫が全て完売した。1日で1カ月分の生産量が売れた計算になるという。

 その後も「高市さんが持っているバッグがほしい」「オンラインで売り切れていたので」などの問い合わせはやまなかった。客層は40代が中心だったが、20代など若い世代からの注文も増えた。

 金具や革の取引先に掛け合い、8パターン展開のうち、高市首相が使っているとみられる黒色だけは何とか予約販売にこぎ着けた。

 いつもは注文から1週間以内に客の手元に届くが、今は約9カ月待ち。「お待たせするのは心苦しいですが、今はクオリティーはそのままに一つ一つ作っていくしかないです」と小林さんは話す。

 ◇「サナ活ボールペン」も

 高市首相が記者会見の際に使っていたペンも話題に上っている。

 SNS上で三菱鉛筆の「ジェットストリーム多機能ペン」のライトピンクと特定され、「サナ活ボールペン」「高市早苗さんモデル」などと紹介する文具店や通販サイトもあった。

 三菱鉛筆のホームページによると、多色ボールペンとシャープペンの機能を併せ持ち、なめらかな書き味がポイントだという。

 ◇政治家も同じ?推しの構造

 グッズ集めに、聖地巡礼……アイドルさながらに政治家を推す風潮は、選挙の度に街頭演説などでよく見られるようになった。

 推し活に詳しい愛知淑徳大の久保南海子教授(心理学・認知科学)は「政治家も、アイドルも、『応援したい』となる構造自体はよく似ています」と話す。

 久保教授によると、推し活とは「愛好する対象にただ好きだなと思うだけでなく、自ら働きかけること」を指す。例えば、インターネットで検索し情報を得ることもその一種で、ライブに行く、グッズを集めるなど消費行動に結びつくものも多い。

 特に気持ちを目に見える形で表すことのできるグッズ集めは重要とされていて、物を介して推しとつながるような感覚になるのだという。

 「推しは、会いに行けるが、普段の生活にはいない存在。でも、SNSで日常的に接する頻度が上がれば、好感を抱いたり、身近に感じたりする傾向にあります。推しからのリアクションや推し仲間との交流がさらなる活動のモチベーションになっていく構造です」

 そういう意味で、誰もが知っており、日常的ではない存在の首相も、推しの対象になり得るのだという。

 ◇サナ活には注意点も

 アイドルには癒やしや日常への活力を求めると聞くが、政治家の場合、自分のイデオロギーや考えと共鳴するから推すのだろうか。

 「高市首相の場合、今はまだ格好良い女性への憧れといったところではないでしょうか」。久保教授はそう冷静に見る。

 だが、これから推し活が進めば、考え方に共鳴したり、合わないと思ったりすることが出てくる可能性もある。そうなった場合には注意が必要だという。

 「政治に関心を持つ入り口としての推し活はとても良いと思います。でも、政治家の推し活はその先の投票行動につながる可能性がある。好き、嫌いだけでなく、政治家個人の考え方まで見るべきだし、発信する時もどんな影響を及ぼすか考える必要があります」【田中理知】

毎日新聞

政治

政治一覧>

写真ニュース