韓国大統領の逮捕状執行を中断 警護庁長への捜査が今後の焦点に

2025/01/03 20:44 

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 韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領による「非常戒厳」の宣布をめぐり、尹氏を内乱などの容疑で捜査している高官犯罪捜査庁(高捜庁)は3日、大統領公邸の敷地内に入り、尹氏に対する逮捕状の執行を試みた。しかし、大統領警護庁要員らの抵抗を受け3日午後、逮捕状の執行を中断すると発表した。

 高捜庁は「今後の措置は検討して決定する」と説明する一方、朴鍾俊(パク・ジョンジュン)警護庁長らに対して公務執行妨害容疑で捜査を始め、4日までの高捜庁への出頭を求めた。今後は逮捕状の再執行や警護庁長に対する捜査が焦点になる。

 聯合ニュースによると、高捜庁20人と警察80人の計100人は3日午前8時過ぎに公邸敷地内に進入。公邸の建物まで約200メートルの地点まで近づいたが、警護庁要員や軍人ら約200人が腕を組んでバリケードを作り、捜査員らの進入を防いだという。

 その過程で大小の小競り合いが起きた。また、協議の結果、検事3人だけが公邸に近づいたが、警護庁要員の多さに検事や捜査員らの安全を確保できないと判断し、敷地内進入から約5時間半後の午後1時半に撤収を決めた。

 公邸の周辺には、逮捕に反対する尹氏の支持者らが3日早朝から集結し、警官らと対峙(たいじ)。騒然とした雰囲気となった。警察は公邸の正門がある幹線道路沿いに多数のバスを「壁」のように並べて停車させ、支持者らが公邸の方向に進入できないように警戒。支持者らは「高捜庁、廃止!」「高捜庁、反対!」と叫んだ。韓国メディアによると、約2700人の警察関係者が公邸周辺に投入された。

 尹氏の弁護団は3日、声明を発表。高捜庁には「内乱罪に対する捜査権限がない」としたうえで、逮捕状は「憲法違反であり無効だ」と主張。また警護庁もこうした弁護団の主張に同調し、「法的根拠なしに警察を動員し、無許可で警護区域と軍事機密施設に入り、警護庁要員を負傷させた」と高捜庁を批判し、法的措置を取るとのコメントを出した。

 ただ逮捕状を発付したソウル西部地裁は、同時に出した捜索令状で軍事上の秘密などに関わる場所の捜索を認めるとする趣旨を明記していた。

 高捜庁は尹氏が3度にわたる出頭要請に応じなかったため2024年12月30日、逮捕状請求に踏み切った。地裁は同31日、尹氏に対する逮捕状を発付した。逮捕状の執行期限は25年1月6日までとなっている。【ソウル日下部元美】

毎日新聞

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