韓国大統領の弾劾審判が結審 3月中旬に決定か 争点は?

2025/02/25 19:42 

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 韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領(職務停止中)による戒厳令を巡り、尹氏の罷免の是非を判断する憲法裁判所での審理が25日、結審した。弾劾訴追案を可決した国会側は最終弁論で「(大統領職への復帰は)憎悪と憤怒で理性を失う者に凶器を渡すようなものだ」と述べ、尹氏の罷免を求めた。韓国メディアは、3月中旬にも決定が出るとの見方を伝えている。

 これまで盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の弾劾では結審から14日後、朴槿恵(パク・クネ)元大統領は11日後に決定が出た。尹氏が罷免されれば、60日以内に大統領選が行われる。罷免されなかった場合は、大統領職に復帰する。

 憲法裁の審理で最も議論されたのが、戒厳令下で尹氏が軍隊や警察を国会へ投入した目的だ。国会側は、戒厳令の解除を要求できる唯一の機関に対して軍を投入して「国会機能をまひさせようとした」と指摘。「憲法秩序を乱す目的の暴動だ」と訴えた。憲法秩序を乱す行為が認められれば、内乱罪にも該当することになる。

 尹氏側は国会多数派の野党が、政府幹部や検事らを相次いで弾劾したり、予算を大幅に削減するなど、国政が「まひ状態」にあったと指摘。野党の「悪事を国民に知らせるためのもの」で、国会機能の無力化を狙ったものではないと主張した。軍隊投入は「警備と秩序維持が目的」で、投入する兵士の数を最小限に抑え、国会の解除要求にもすぐに応じたと強調した。

 国会側の主張の主な根拠となっているのは、現場を指揮した郭種根(カク・ジョングン)前陸軍特殊戦司令官の証言だ。尹氏から「国会の門を壊して、中にいる人員を引っ張り出せ」との指示を受け、採決させないよう国会議員を議場から出せとの意味と受け止めたとしている。軍首都防衛司令部の第1警備団長も上官から「議員を引きずり出せ」と命令されたと主張した。

 更に、情報機関の国家情報院(国情院)の洪壮源(ホン・ジャンウォン)前第1次長は尹氏から、与野党の代表ら政治家の逮捕を指示されたと明らかにした。だが、尹氏は電話をしたことなどは認めたものの、これらの指示内容は全て否定した。

 軍投入の違憲・違法性以外にも、戒厳令には複数の憲法違反があったというのが国会の立場だ。憲法では戒厳令の宣布要件を「戦時やそれに準じる国家非常事態」において「兵力で対応したり公共の秩序を維持したりする必要がある」場合と規定している。国会側は今回の戒厳令はこうした要件を満たしていないと指摘した。

 尹氏による「国会と地方議会、政党の活動」などを禁止する布告そのものが憲法違反だとも指摘されている。これについて尹氏側は審理の中で「戒厳の形式を整えるためのもので、執行の意思はなかった」と反論した。【ソウル日下部元美】

毎日新聞

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