トランプ氏の判事攻撃 米最高裁長官が「異例の声明」でくぎ刺す
トランプ米大統領は18日、戦時法である「敵性外国人法」を活用した南米ベネズエラの犯罪組織メンバーらの強制送還を差し止める命令を出した連邦地裁判事について、「弾劾すべきだ!!!」と自身のSNS(ネット交流サービス)に投稿した。これに対し、ロバーツ連邦最高裁長官は異例の声明を出し、名指しこそ避けながらトランプ氏にくぎを刺した。
トランプ氏は15日、ベネズエラの犯罪組織「トレン・デ・アラグア(アラグアの列車)」が、米国の領土を侵略しようとしているなどとし、「敵対外国人」を拘束、送還する権限を大統領に与える敵性外国人法を使うとの布告を発表。政権は、同組織のメンバー数百人を15日から16日にかけて、受け入れに合意した中米エルサルバドルに追放したとも発表した。
しかし、首都ワシントンの連邦地裁判事は15日夜、戦時法は適用できないとし、対象者の送還を一時差し止める命令を出した。判事が命令を出した時刻と、メンバーを乗せた飛行機が米国領空を出た時刻との前後関係を巡り、「命令無視」に当たるかどうかの論争が続いている。
トランプ氏は投稿で、担当判事を「過激な左派」、「オバマ(元大統領)に指名されたトラブルメーカーで扇動者」などと攻撃。「私は圧倒的な支持を得て(大統領選で)勝利し、有権者が私に望んでいたことをやっているだけだ」などと主張した。
これに対し、ロバーツ氏はトランプ氏の投稿後、「2世紀以上にわたり、司法判断に対する不服を理由に弾劾を行うことは適切な対応ではないということが確立されてきた。そのために、通常の上級審による審理プロセスが存在する」との声明を出した。名指しはしていないが、トランプ氏を批判した形だ。米メディアによると、最高裁長官が大統領に対する意見を公の場で示すことは異例という。
ロバーツ氏は、最高裁判事9人の多数派を占める保守派6人のうちの一人で、共和党のブッシュ(子)元大統領に指名された。第1次トランプ政権下の2018年にも、政権の不法移民対策を一時差し止めた連邦地裁判事を「オバマ判事だ」と非難したトランプ氏に対し、「米国にはオバマ判事もトランプ判事も、ブッシュ判事もクリントン判事もいない」と述べて反論した経緯がある。【ワシントン西田進一郎】
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