「トランプ減税」法案が米下院を通過 財政悪化を懸念、上院で修正も

2025/05/23 11:32 

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 トランプ米大統領の掲げる大型減税などを盛り込んだ法案が22日、米議会下院で可決された。1次政権で始めた「トランプ減税」の恒久化や、新たに始めるチップや残業代への課税廃止などが柱。低所得者を支える社会保障費などを削ったものの減税による収入源を補えず、連邦政府の財政赤字は大幅に膨らむ見通し。貧富の差も拡大しそうだ。

 賛成215、反対214の僅差で可決された。野党である民主党全員に加え、与党・共和党2人が反対に回った。共和党は両院で多数派だが、下院と同様、上院でも法案に難色を示す共和党議員がいる。このため、上院で法案が修正される可能性もある。

 法案の目玉は、トランプ氏が1次政権時代の2017年に始めた個人向け所得税減税などの恒久化。25年末に一部が失効するため、延長しなければ米家計の税負担が増え、米経済に深刻な打撃を与える恐れがある。

 飲食店などサービス業界で働く人へのチップや残業代への課税廃止はトランプ氏が有権者に対する新たな恩恵策として大統領選でアピールしていた政策となる。また、米国で組み立てられた自動車の購入者に対する自動車ローン金利の税控除措置も設ける。

 一方、低所得者向け公的医療保険「メディケイド」や食料支援プログラムなどの予算は削減する。バイデン前政権が重視していた電気自動車(EV)購入者への優遇措置や、風力など再生可能エネルギーへの税額控除は廃止する。

 ただ、これらの歳出削減策を講じても、一連の大型減税の穴埋めはできない状況だ。超党派の米議会予算局(CBO)によると、同法案が実行されれば26年から34年にかけて連邦政府の財政赤字は約3・8兆ドル(約550兆円)増える見通し。市場では22日、財政悪化懸念から米国債売りが活発化し、長期金利が上昇した。

 富裕層を含め多くの米国民が減税の恩恵を受ける一方、低所得者は社会保障の支えを失うことになる点も懸念材料だ。CBOの試算では、27年に所得の低い下位10%の世帯が4%収入を減らす一方、所得の高い上位10%は2%収入が増える見通しだ。

 法案には連邦政府の借金限度額を定める「債務上限」を現行の36・1兆ドルから40兆ドルに引き上げる項目も含まれている。米政府の債務残高は既に上限に達しており、新たな借り入れはできない状態だ。8月にも資金が底を突き、米国債の利払いや償還が滞る「債務不履行(デフォルト)」の恐れもあり、早期に上限を引き上げる必要がある。

 トランプ氏は7月上旬までに法案を成立させたい考え。だが、共和党には歳出削減や財政健全化を求める保守強硬派が多い一方、社会保障費の大幅削減に反対する議員もいる。下院では採決前に法案を修正し1票差の可決にこぎ着けたが、上院でも審議が難航する可能性が高い。【ワシントン大久保渉】

毎日新聞

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