メルケル氏が伝授する対トランプ氏交渉術 「怖がらず、たきつけず」
今年1月に2期目の任期をスタートさせたトランプ米大統領は、半年もたたないうちに世界に混乱の種をまき散らした。そのトランプ氏の1期目(2017年~21年)に、同盟国のリーダーとして正面から向き合ったのが、ドイツのメルケル首相(当時)だった。2021年に政界を引退した自身とは対照的に、超大国の指導者に返り咲いたトランプ氏をどう見ているのか。
「不動産事業者であり、ある土地を得るかどうか。勝者か敗者しかいない」
5月下旬に来日し、都内で開かれたトークイベントに出演したメルケル氏は、トランプ氏の思考回路をこう分析した。
第2次トランプ政権が「明快でイデオロギー的なプロジェクトを打ち立てている」と指摘。米国の名門ハーバード大学の留学生受け入れ資格の取り消し措置に言及し、「ハーバード大は米国の学問の自由を象徴するものだった。米国や西洋の歴史を揺るがしている」と苦言を呈した。
ただ、自身の経験も踏まえて「国際政治ではみんなが勝者になれる」と語り、トランプ氏と渡り合う秘訣(ひけつ)を次のように説明した。
まず、自国の利益を明確にすること。そして、忍耐力と断固たる決意を持つこと。メルケル氏は「トランプ氏を怖がってはいけない。(自国の利益を)明確に示すこと(が大事だ)」と強調した。
ただし、「自分たちからたきつけるようなことをしてはいけない」とも指摘した。「安全保障でも経済でも、私たちには米国が必要だからだ。中長期的には、トランプ氏も米国民も『国際協調があれば自身がより豊かになる』と気づくだろう」と語った。
◇プーチン氏、習近平氏には…
メルケル氏は欧米が相対する二つの大国のリーダーにも言及した。
ロシアのプーチン大統領については、対話を重ねることの重要性を説いた。
プーチン氏はかつてメルケル氏に「20世紀に起きた最悪なことはソ連の崩壊だ」と話したことがあるという。これに対して、メルケル氏は「20世紀最大の惨事はナチスドイツだ」と言ったという。
メルケル氏は「これだけ世界観が違う。何度も話してきたが、ハーモニーあふれる会話ではなかった」と回顧。「とはいえ、首脳としては意見が違っても現実的な観点から対話を続ける必要がある」と話した。
今のプーチン氏についてメルケル氏は「よりアグレッシブになった」とみる。ロシアのウクライナ侵攻への対応については「ロシアに勝たせないことだ。(米欧は)ウクライナの頭越しではなく、ともに対策をとる必要がある」と訴えた。
一方、中国の習近平国家主席は「権力欲が強く、自身に権力を集める人。明確なビジョンを持っている。それを知るためにも、接触して対応することが大事だ」と分析した。
メルケル氏は約16年間の首相在任中、中国を12回公式訪問し、習氏とも会談を重ねてきた。ドイツ経済も中国との関係を強化してきたが、メルケル氏は「戦略的にも関係を絶つわけにはいかない。しかし今はその状況を(中国側から)武器として使われるようになっている。あまりにも依存を強くてしまうのはよくない」と述べた。
メルケル氏は今回、回顧録「自由」の邦訳版の出版に合わせて来日。トークショーは「欧州核心トーク 戦後80年、崩れる世界秩序 メルケル氏に聞く『自由』の行方」(日本経済新聞社主催・KADOKAWA協力)とのテーマだった。
メルケル氏は自身の定義する自由について、自国の利益を優先する大国のリーダーらにくぎを刺すようにこう話した。
「自由に何でも決められるということではない。他の人に敬意を持たないような自由は自由ではない」【石山絵歩】
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