イランがイスラエルへの報復を本格化 ミサイル攻撃で3人死亡

2025/06/14 07:35 

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 イスラエルが13日にイラン国内の核施設などを空爆したことへの報復として、イランは同日夜(日本時間14日未明)、イスラエルに対し、弾道ミサイルなどによる大規模な攻撃を開始した。攻撃は14日も続き、イスラエルメディアによると、少なくとも3人が死亡、70人が負傷した。イスラエルも攻勢を強めており、紛争は激化している。

 イランメディアは、数百発の弾道ミサイルで波状攻撃を実施したと報じている。ロイター通信などによると、イスラエル軍は米軍の支援を受けて迎撃を行ったが、一部が防空網をかいくぐって商都テルアビブなどに着弾。中部リション・レジオンでは住宅地に直撃し、60代の女性と40代の男性が死亡し、少なくとも19人が負傷した。テルアビブ近郊ラマトガンでも60代の女性が死亡した。

 攻撃に先立ち、イラン最高指導者ハメネイ師はテレビ演説で「シオニスト体制(イスラエル)を崩壊させる」と語り、報復攻撃を本格化させる考えを示していた。ハメネイ師直轄の精鋭軍事組織・イラン革命防衛隊は14日、軍事基地など150カ所以上を標的にしたと明らかにした。

 イランのミサイル攻撃を受け、イスラエルのカッツ国防相は13日、イランが「レッドライン(越えてはならない一線)を越えた」と述べ、攻撃を強める考えを示した。イスラエルは住宅地に被害が出れば、イランの石油関連施設などを標的にするとしており、今後、軍事施設から国家インフラへと標的を拡大する可能性がある。

 イラン側も、自国のエネルギー施設などが攻撃されれば、同様の報復に踏み切る構えを見せている。

 イランメディアは14日、イランが米英仏の3カ国に対し、報復攻撃を妨害すれば、中東地域に展開する各国の軍事基地やペルシャ湾などを航行する船舶を「標的にする」と警告したと伝えた。

 一方、イランでも空爆が続いている。イスラエル軍は13日、中部イスファハンの核施設などを攻撃したと発表し、14日には首都テヘランの防空システムなどに被害を与えたと明らかにした。軍は「今後も戦略的な拠点への攻撃を続ける」としている。イランメディアは13日にテヘランの住宅街で起きた攻撃により、子供20人を含む60人が死亡したと報じた。

 中東で緊張が一気に高まる中、国際社会では双方に「自制」を求める声が強まっている。これに対し、イランのアラグチ外相は13日、英国のラミー外相との電話協議で、イスラエルの攻撃に直面する中で自制を求められるのは「不当だ」と反発を示した。

 イランの核開発を巡っては、15日に仲介国オマーンでイランと米国の交渉が予定されている。米メディアによると、トランプ米大統領は13日、「彼ら(イラン)は今真剣に交渉するかもしれない」と述べ、空爆が交渉を進展させることに期待を示した。

 ただ、イラン外務省報道官は14日、地元メディアに対し、イスラエルの攻撃について「米国の協力なしにできるとは想像できない」と語り、協議に参加するかは「不透明だ」と述べた。【カイロ金子淳、エルサレム松岡大地】

毎日新聞

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