タイ憲法裁、首相の職務一時停止を命令 紛争対応巡り国内で反発

2025/07/01 18:57 

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 タイの憲法裁判所は1日、ペートンタン首相に対して職務の一時停止を命じた。タイとカンボジアの国境紛争を巡る対応が問題視され、上院議員が憲法の定める首相の倫理基準に反しているとして、解職を求めて訴えていた。判決まで時間がかかるとみられ、この間は副首相が首相代行を務める。

 2024年8月に発足したペートンタン政権は、トランプ米政権との関税交渉など重要な局面を迎えているが、政局の混乱は避けられない。

 問題となっているのは、ペートンタン氏とカンボジアの上院議長を務めるフン・セン前首相が国境紛争に関して行った電話での会話だ。2人はペートンタン氏の父タクシン元首相も交えた家族ぐるみの親交があった。この音声が流出し、ペートンタン氏がフン・セン氏に融和的な態度を示し、自国軍を非難するような内容にタイ国内で反発が強まった。

 流出直後に与党第2党の「タイの誇り党」が連立から離脱。与党勢力は下院で過半数を維持しているものの窮地に追い込まれた。この混乱に伴い内閣改造が行われ、1日朝に国王が新閣僚を承認したと公表された。ペートンタン氏は首相と文化相を兼任することになり、首相職務停止中も内閣にとどまる。

 与党勢力の求心力は低下している。国立開発行政研究院が6月29日に発表した世論調査では、ペートンタン氏の支持率は9・2%と3月から22ポイント近く下落。首相交代や解散総選挙の可能性も浮上しており、政党間の駆け引きが激しくなりそうだ。

 国境紛争は長年にわたりくすぶってきたが、5月下旬に係争地で両軍の銃撃戦が発生し、カンボジア兵1人が死亡したことで悪化した。双方が国境検問所を閉鎖して人や物の行き来を制限するなどエスカレートしている。6月28日にはバンコク市内でペートンタン氏の解任を求める2万人規模の抗議集会が開かれた。【バンコク武内彩】

毎日新聞

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