トランプ氏「グリーン詐欺は終わり」 米EV購入支援9月末で打ち切り

2025/07/04 19:32 

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 大型減税などトランプ米大統領の肝煎り政策を盛り込んだ法案の成立が確実となった。電気自動車(EV)の購入支援策は9月末で打ち切られ、低所得者向け医療保険など社会保障費も大幅に削られる。環境・福祉を重視したバイデン前政権時代から政策が一変することになる。

 「新たなグリーン詐欺は終わりにする。EVの義務化はバカげている」。トランプ氏は3日、米中西部アイオワ州での演説で、EV優遇策を「詐欺」呼ばわりし、痛烈にこき下ろした。

 米政府は現在、EV購入者に最大7500ドル(約108万円)の税控除を与えるEV優遇策を実施している。バイデン前政権が2022年8月に成立させた大型歳出法案の目玉政策で、32年まで続けられる予定だった。法案では当初、優遇策を12月末で終了するとしていたが、上院で終了日が3カ月早まった形だ。

 米調査会社によると、6月下旬時点で米国のEV新車価格の平均は5万7700ドル。ガソリン車(4万8100ドル)に比べ約9000ドルも高い。税控除が両者の価格差を縮め、22年以降の米国内でのEV普及拡大に貢献しており、優遇策がなくなれば、EVの普及に急ブレーキがかかるのは確実だ。

 米国の新車販売に占めるEVの割合はいまだ1割未満にとどまっているのに対し、中国は比亜迪(BYD)など地場メーカーを中心に攻勢をかけている。米大手自動車メーカーは「中国との競争に負ければ未来はない」(フォードのジム・ファーリー最高経営責任者)と危機感を強めるが、トランプ政権の影響で米国メーカーのEV開発にも支障を来す可能性がある。

 トランプ氏が嫌悪感を示す「気候変動対策」でも後退が鮮明になった。法案では太陽光・風力発電所を建設した企業に対する税額控除の受付期間を短くする一方で、石油や天然ガス、石炭の採掘に関する優遇措置を設けるなど気候変動に逆行する内容を盛り込んだ。

 社会保障費に大なたを振るったことも特徴だ。歳出を大幅にカットするとして、低所得者・高齢者向けの公的医療保険制度の受給資格を厳格化する。大量の無保険者が生まれ、有権者の反発が広がることを恐れる一部の共和党議員が強く反発するなど、法案の成立が一時危ぶまれたほどだ。

 米国で社会問題となっている連邦政府の学生ローンについても、バイデン前政権が導入した返済負担の緩和措置を縮小。逆にトランプ政権が重視する国境警備強化や国防にかかる予算は積み増しており「トランプ色」を鮮明に打ち出した。

 また、法案では連邦政府の借金上限額を定めた「債務上限」を現在の36・1兆ドルから5兆ドル引き上げることを盛り込んでいる。債務上限をめぐっては、上限が近付くたびに与野党の協議が難航。交渉がまとまらず、政府が追加借り入れできずに米国債が債務不履行(デフォルト)に陥る恐れは当面、遠のくことになる。【ワシントン大久保渉】

毎日新聞

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