高校卒業後は韓国の大学へ 正規入学が2500人時代

2025/08/04 09:00 

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 日本の大学に進学せず、高校卒業後すぐに韓国の大学学部に正規入学した日本からの学生の数が2023年以降、語学研修生や交換留学生ら短期留学生を追い越し、増え続けている。新型コロナウイルスが流行した時期、短期留学生が帰国を余儀なくされる状況を見て「4年間どっぷり、韓国人学生と一緒に切磋琢磨(せっさたくま)したい」と覚悟を決めた学生が多い。日韓関係は若者世代から地殻変動が起きているようだ。

 ◇コロナ期も韓国に残った正規生

 韓国教育省の24年統計によると、韓国内の4年制大学の学部に通う日本から来た学生は在日韓国人を含め2408人。これは、語学研修生(1496人)▽交換留学生など(1012人)▽修士・博士課程の大学院生(334人)――を大きく上回る。25年統計はまだ発表されていないが、2500人を超える勢いだ。在日を日本人留学生と区分する統計は現在はないものの、4%弱との推計がある。

 新型コロナ流行前の19年までの10年間は、日本からの留学生は大学院生も含め全体で4000人前後の横ばいで推移していた。00年代半ばから始まった韓流ブームを受けて語学研修生は増え、ピークの11年には2500人近くに達したが、翌年の李明博(イミョンバク)大統領(当時)の竹島上陸を契機にした日韓関係悪化を受け、減少傾向に一変。16年には1200人台にまで落ち込み、じわりと増え続けていた学部生と横並びとなった。そこへ新型コロナ流行に伴う出入国規制が影響し、長期ビザを持ち国外に追い出されない正規学生が短期留学生をしのぐ主流派の座におさまった。

 ◇留学生を歓迎する韓国事情

 外国人学部生の増加は、受け入れる韓国大学側の事情もある。韓国の留学生政策と実態を研究している香川大の塚田亜弥子特命准教授によると、韓国政府は10年から大学授業料引き上げを規制し、17年には入学金廃止も決めた。各家庭の教育費負担を軽減する狙いだが、これによって各大学は財政難に陥り、規制の枠外である留学生の受け入れに積極的になったという。

 00年に6000人余だった韓国内の外国人留学生数は08年に5万人、16年に10万人に増加。24年には20万人台を達成した。

 「財政難に直面する韓国大学側の事情と日本の学生の意識変化が重なり、日本人学部生が増えた」。塚田氏はこう指摘したうえで「中長期間にわたって海外留学する日本人を育成するのは日本政府の方針でもあり、韓国の大学を卒業した新卒生が日本で円滑に職に就けるよう支援する必要がある」と語る。

 ◇人気大学ランキングは

 24年統計によると、日本からの正規学生数が多い大学は旧統一教会系の鮮文(ソンムン)大(408人)だが、それ以外で最も人気があるのは私立の名門・延世(ヨンセ)大(187人)だ。3位以降は、韓国外国語大(146人)▽崇実(スンシル)大(132人)▽慶熙(キョンヒ)大(131人)――といずれも私立大が続き、ここまでが100人の大台に乗る。

 ちなみに韓国の受験戦争を描いた人気ドラマ「SKYキャッスル」のSKYは、名門大の御三家であるソウル大、高麗(コリョ)大、延世(ヨンセ)大の頭文字で、韓国人学生が目指す頂点の難関校だ。ソウル大に通う日本からの学生は10人(35位)、高麗大は78人(9位)だった。

 ◇日本人留学生組織拡大の兆し

 日本人留学生の拠点となっている延世大には語学留学生と正規留学生が垣根なく集う「延世大学日本留学生協会(JSAY)」があり、6月には日韓国交正常化60年を記念した文化イベントを構内で開いた。JSAY副会長の南(みなみ)歩乃花(ほのか)さん(22)は「日本人が少ない大学の留学生が孤立しないよう、今後は十数大学をつなぐ学生交流会にも力を入れたい」と語った。【堀山明子】

毎日新聞

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