感染症対策は「AIがカギ」 ビル・ゲイツ氏、日本との連携に期待

2025/08/20 15:26 

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 第9回アフリカ開発会議(TICAD9)の開幕を控えた19日、マイクロソフトの共同創業者ビル・ゲイツ氏が東京都内のホテルでグローバルヘルス(国際保健)と研究開発をテーマに講演した。ゲイツ氏と元妻メリンダ氏が共同運営する慈善団体「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」が主催。ゲイツ氏は「感染症撲滅のための活動が資金面の課題に直面する中、グローバルヘルス向上のためには人工知能(AI)などによるイノベーションが鍵になる」と述べ、日本とのパートナーシップに期待を示した。

 2000年に創設された同財団は、これまでに1000億ドル(約15兆円)以上をマラリアやエイズウイルス(HIV)などの感染症対策や貧困削減に投じてきた。一方で「米国第一」を掲げるトランプ米大統領は対外援助の大幅削減を示し、世界保健機関(WHO)からの脱退も表明。欧州でも援助縮小の動きが広がっている。

 米メディアによると、ゲイツ氏はトランプ氏と面会するなどして継続的な支援の必要性を訴え、5月には財団を通じて45年末までに自身の財産のほぼ全額にあたる2000億ドル(約29兆円)以上を寄付する方針を示した。

 ゲイツ氏は慈善事業を始めた際、「貧しい国では5歳未満の子どもの死亡率が先進国に比べて15倍以上も高いという事実を知った」と振り返り、現在ではワクチン普及などにより、その死者数は年1000万人から半減したと指摘。それでも「いまだに不平等は残る」として政府や企業などによる継続的な資金提供とAIなどを活用した研究開発の進展に期待を寄せた。

 アフリカ諸国では人口増が進み、50年には世界人口の4人に1人をアフリカ人が占めると予測される。ゲイツ氏は「大陸全体を助けることは、世界の未来を考える上で重要だ。子どもたちのためだけでなく、世界経済の成長にもつながる」と強調。世界の感染症や貧困対策に約1000億ドルを投じれば、約50兆ドルの経済効果が見込めるとの試算を紹介した。

 また感染症対策における日本の役割の大きさにも言及。日本政府や国連の提唱で02年に創設された「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」や、日本が主要ドナーである国際組織「Gaviワクチンアライアンス」の成果を評価したうえで、「予算削減の圧力にさらされる中でも、こうした支援が非常に重要な優先事項として維持されることを願う」と述べた。【古川幸奈】

毎日新聞

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