韓国政府が「脱北者」の呼び方再検討 「否定的ニュアンス強い」

2025/09/17 14:15 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 韓国統一省が北朝鮮から逃れてきた脱北者の呼称変更を検討している。候補には「北郷民」などが挙がっている。年末までに専門家や脱北者の意見を取りまとめて用語を選定する方針だ。

 韓国では一般的に、脱北者を「脱北民」や「北朝鮮離脱住民」と呼んでいる。聯合ニュースによると、鄭東泳(チョン・ドンヨン)統一相は16日に開催されたイベントで、「北朝鮮離脱住民が最も嫌う単語が『脱』だ。語感も良くない」と指摘。「『北朝鮮に故郷を置いてきた方々』との意味で『北郷民』が一番(支持が)多いようだ」と語った。

 統一省関係者は16日、韓国語では「脱」という言葉に「逃げてきた」という否定的なニュアンスが強いとして、脱北者の「安定的な定着と社会統合のための名称変更を専門家と検討している」と明らかにした。法律上では「北朝鮮離脱住民」と規定されており、法律用語についても今後、検討する。

 脱北者の呼称を巡っては以前から議論があった。2004年度に韓国政府が「セトミン」に変更する方針を発表。「新たな土地で人生への希望を抱いて生きる人」という韓国語を縮めたものだったが、「脱北者が好まず、定着しなかった」(統一省関係者)。「北郷民」は、脱北者社会で広範囲で使用されているという。

 セトミンを発表した際の統一相は、現在と同じ鄭氏だった。鄭氏は南北融和姿勢が強い人物とされており、名称変更は鄭氏の「肝いり」政策との見方も出ている。

 統一研究院が昨年発表した調査では脱北者の約6割が呼称の変更に賛成した。ただ、韓国メディアは「大衆に広く使用されてきた脱北民との表現を政府のキャンペーンで変えるのは容易ではない」と指摘している。また、北朝鮮の圧政から「自らの意志で逃げてきた」との強い思いを持つ人もいる。統一省関係者は、「個々人で考え方も違う。最大公約数を見つけたい」と述べた。【ソウル日下部元美】

毎日新聞

国際

国際一覧>

写真ニュース