米NY市長選、現職が撤退 首位への対抗馬一本化でトランプ氏影響か

2025/09/29 17:09 

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 米ニューヨーク市のアダムズ市長(65)は28日、11月の市長選からの撤退を発表した。市長選は、民主党予備選を勝ち抜いた急進左派のマムダニ・ニューヨーク州下院議員(33)が支持率でトップを走る。マムダニ氏を「共産主義者」と呼んで敵視する共和党のトランプ大統領は、対抗馬の一本化が望ましいとして、無所属で出馬していたアダムズ氏に撤退を働きかけたと報じられている。

 ニューヨーク市は政治的に民主党が優勢で、市長選では共和党に有力候補がいない。民主党予備選に敗れ、無所属で出馬するクオモ前ニューヨーク州知事(67)に、アダムズ氏を支持していた一部の穏健派や経済界の票が流れる可能性がある。

 アダムズ氏は28日にX(ツイッター)に投稿した動画で、撤退理由として資金調達の問題を挙げた。選挙戦で誰を支持するかは明言しなかったが、「制度を壊すのが答えだと主張する者には注意すべきだ」と述べ、マムダニ氏を暗に批判した。

 アダムズ氏は自身の汚職事件の起訴取り下げをめぐり、トランプ政権と取引した疑惑を受けて支持離れが加速。民主党から無所属に切り替えて再選を目指したが、候補者別の支持率は1桁台で低迷していた。市長選の投票用紙にアダムズ氏の名前は残るという。

 トランプ氏は米最大都市の選挙のゆくえに神経をとがらせる。ニューヨーク・タイムズなどによると、アダムズ氏は9月上旬、南部フロリダ州でトランプ氏の信頼が厚い「不動産王」のウィットコフ中東担当特使と会談。サウジアラビア大使のポストと引き換えにアダムズ氏に撤退を促す案が一時浮上していたとされる。

 トランプ氏は、政権1期目に新型コロナウイルス対策を巡り、当時ニューヨーク州知事だったクオモ氏と敵対関係にあった。しかし、トランプ氏は今月、「(候補者4人のうち)2人が脱落して、1対1になってほしい。それが勝てるレースだ」と述べ、共和党から出馬する自警団創設者のスリワ氏(71)の撤退も望んでいることを示唆した。

 クオモ氏は28日、アダムズ氏の撤退を評価し、「破壊的な過激派勢力」を止める必要があると訴えてマムダニ氏への対抗意識をあらわにした。

 一方、マムダニ氏は同日、「トランプと彼の億万長者の支援者たちは、アダムズとクオモの行動は左右できるかもしれない。しかし、彼らがこの選挙を決めることはない」と強調した。

 政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」による各種世論調査の集計(22日時点)では、マムダニ氏が支持率44・4%で他の候補を引き離す。クオモ氏は25・4%、スリワ氏は13・8%、アダムズ氏は8・4%だった。

 アダムズ氏は元警察官で、同市のブルックリン区長を経て2021年の選挙で初当選した。トルコ政府関係者から高額の接待を受け、領事館の開設許可で便宜を図ったとして収賄罪などで24年に起訴されたが、トランプ政権発足後に取り下げられた。【ニューヨーク八田浩輔】

毎日新聞

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