餓死した女児は生まれたときより痩せていた 飢餓が兵器となったガザ
生後5カ月の女児、ザイナブ・アブハリーブちゃんは7月、母親の腕の中で静かに息を引き取った。死因は餓死だった。病院に向かっていたが間に合わなかった。
パレスチナ自治区ガザ地区では食料搬入が厳しく制限され、栄養失調による子供の死は後を絶たない。これまでに150人以上の子供が命を落とした。
「イスラエルの封鎖が、ザイナブを殺した」。取材に応じた母親は、電話口で涙を流した。
ザイナブちゃんは2月15日、南部ハンユニスのナセル病院で生まれた。
体重は2900グラム。健康に問題はなく、ふっくらしていた。戦火の下に生まれた小さな希望。家族はイチゴ模様のベビー服を着せ、みんなで誕生を祝った。
だが、3月に入り、イスラエルはガザ地区へのすべての物資搬入を停止した。
牛乳アレルギーを持つザイナブちゃんに必要なアレルギー用の粉ミルクは、4月には手に入らなくなった。母親のイスラアさん(31)も妊娠中から十分な食事が取れず、母乳はほとんど出なかった。
生後50日を過ぎたころから下痢や嘔吐(おうと)、発熱を繰り返し、急激に痩せ細っていった。両親は病院に何度も通い、点滴や栄養剤の投与を受けさせた。
しかし、医師からは「ガザには十分な薬も施設もない。海外で治療を受けるしかない」と告げられた。両親は世界保健機関(WHO)の仲介によるガザ域外での治療を申請した。
7月25日。ザイナブちゃんは避難先のテントの中で激しく泣き続けた。異変を感じたイスラアさんが炎天下を病院へ急ぐ途中、呼吸が止まった。体重は2キロ以下で、生まれたときより減っていたという。
「ガザの域外で治療が受けられる」。承認の連絡が届いたのは、死から4日後だった。「あと少し早ければ、助かったかもしれない。これはイスラエルによる戦争犯罪だ」とイスラアさんは声を詰まらせた。
ナセル病院の小児科医、アハマド・ファラさん(53)によると、4月ごろから栄養失調の患者が増え、7~8月には2カ月間で延べ約2万8000人に達した。半数は深刻な状態で、2割は入院が必要だった。必要量の1割にも満たない支援しか届かず、「飢餓そのものが兵器として利用されている」と訴えた。
イスラエルは5月下旬以降、米国と主導して設立した「ガザ人道財団」を通じて食料を配布している。だが、配布拠点周辺では軍の発砲などによる犠牲者が相次ぎ、食料を受け取りに来た住民2500人以上が死亡した。
国連の支援も続くが搬入量は厳しく制限され、国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、9月1~28日に届いた食料は必要量の4分の1にとどまった。このうち約8割は輸送途中で略奪されたという。国連は北部ガザ市で「完全に人為的な飢饉(ききん)」が発生したと認定し、来年6月までに5歳未満の子供4万人以上が死亡する可能性があると試算する。
ガザではすでに450人以上が飢えで命を落とし、150人を超える子供が含まれる。国連が警鐘を鳴らす中、イスラエルは「誤ったデータだ」として、なお飢饉の存在を認めていない。【エルサレム松岡大地、カイロ金子淳】
-
ハマス、イスラエル軍のガザ完全撤退を要求 人質解放と引き換え
パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスとイスラエルの停戦協議を巡り、ハマス幹部は7日、中東の衛星テレビ「アルジャジーラ」に対して、すべての人質の解放と同…国 際 3時間前 毎日新聞
-
ハマス、イスラエル軍の完全撤退を要求 人質解放と引き換えに
パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスとイスラエルの停戦協議を巡り、ハマス幹部は7日、中東の衛星テレビ「アルジャジーラ」に対して、すべての人質の解放と同…国 際 6時間前 毎日新聞
-
グレタさんら船団の日本人女性、イスラエルから送還 ヨルダンに到着
パレスチナ自治区ガザ地区に向かう地中海の公海上でイスラエル軍に拘束された滋賀県大津市出身でオランダ在住のエンジニア、安村美香子さん(62)が7日、イスラエルか…国 際 16時間前 毎日新聞
-
オーストラリア、70年ぶりの新同盟 パプアと相互防衛条約に署名
オーストラリアと太平洋の島国パプアニューギニアの両首相は6日、有事の際の共同防衛などを定めた相互防衛条約に署名した。両国でそれぞれの議会の批准を経て発効する見…国 際 16時間前 毎日新聞
-
米国防総省、新たな取材規制方針を発表 「検閲」批判受け
米国防総省は6日、米軍などへの取材規制について新たな指針を発表した。9月にメディア側へ示した文書では、未公表の情報を報じる場合は、機密情報以外も「事前に当局者…国 際 20時間前 毎日新聞