ハンガリー首相、米の対露制裁で苦境 トランプ氏と「除外」交渉へ

2025/11/07 11:31 

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 欧州連合(EU)加盟国でありながら親露的な姿勢を貫くハンガリーのオルバン首相が苦境に立たされている。ロシア産原油の輸入を続けてきたことで、トランプ米大統領が10月に発表した対露制裁の影響が懸念されるからだ。オルバン氏は7日にトランプ氏と米首都ワシントンで会談し、制裁の「適用の除外」を訴える方針だ。

 「特殊事情を理解してもらわなければならない」。AP通信によると、オルバン氏は10月31日、国営ラジオでそう強調した。「ハンガリーは内陸国だ。パイプラインを使った輸送に依存している」と述べ、ロシア産の原油に頼らざるを得ないと主張した。

 トランプ氏は10月22日、ウクライナに侵攻するロシアに圧力をかけるため、ロシアの石油大手2社に制裁を科すと発表し、2社との取引にかかわった外国の金融機関も「2次制裁の対象となる恐れがある」とした。ロシア産原油に依存するハンガリーの金融機関も対象となる可能性がある。

 22年2月のウクライナ侵攻開始後、EUはエネルギーのロシア依存脱却を進めた。同6月にはロシア産原油の輸入禁止を決定している。ただし、ハンガリーの強い主張もあってパイプライン経由での輸入は継続している。

 フィンランドの環境・エネルギー研究機関「CREA」によると、ハンガリーのロシア産原油の輸入量は21年には約330万トンだったが、24年には約450万トンに増加。ロシアへの依存度も61%から86%へと高まった。

 CREAは、同様に輸入を続けるスロバキアと合わせた原油取引によって、ロシアは22年以降、54億ユーロ(約9550億円)の税収を得たと試算する。この金額はウクライナへの攻撃に使われるロシアの弾道ミサイル「イスカンデル」1800発分に相当するという。

 オルバン首相は、ロシアからの輸入を止めれば「エネルギー価格が上がり、ハンガリーの経済が崩壊する」と主張している。だが、クロアチア経由のパイプラインが存在し、ロシア以外からの輸入も可能との指摘もある。ロシア産に固執するのは、ロシアのエネルギー企業との癒着が背景にあるとの見方が強い。

 ハンガリーが制裁の対象となれば、低迷する経済に大きな打撃だ。オルバン氏が事態打開のために期待するのが、トランプ氏との親密な関係だ。二人は「友人」と呼び合う間柄で、オルバン氏は1期目の米大統領選からトランプ氏を公然と支持してきた。

 だが最近、トランプ氏は、ハンガリーを含む欧州にロシア産原油から完全に手を引くことを求めている。10月31日には「彼(オルバン首相)は(対露制裁の)適用の除外を求めてきたが認めなかった」とも発言している。

 オルバン氏は、トランプ氏が10月に対露制裁を発表すると、「やりすぎだ」と珍しく批判した。今回の訪米では関係閣僚らで構成した大規模な代表団を引き連れてトランプ氏に直談判する方針で、オルバン氏の外交手腕が問われることになる。【ベルリン五十嵐朋子】

毎日新聞

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