パリ協定の1.5度目標 国連総長「超過不可避。道徳的な失敗」

2025/11/07 10:10 

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 国連のグテレス事務総長は6日、気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)の首脳級会合で演説し、世界の気温上昇を産業革命前から1・5度に抑える「パリ協定」の目標について「遅くとも2030年代前半に一時的に超えることは避けられない」と述べた。「道徳的な失敗であり、致命的な怠慢だ」と語気を強め、超過分をできる限り小さくするための対策を加速するよう訴えた。

 国連環境計画(UNEP)が今月発表した報告書によると、現行の気候変動対策を続けた場合、世界の平均気温は今世紀末までに最大2・8度上昇する。パリ協定の参加国が9月末までに発表した温室効果ガスの新たな削減目標を完全に履行しても、上昇幅は2・3~2・5度になると分析した。

 グテレス氏は演説で「1・5度は人類にとって越えてはならない境界線」だと改めて強調。「厳しい現実」を認めた上で、目標値を超えた後も、森林などによる温室効果ガスの吸収量が排出量を上回る状況を実現し、今世紀末までに気温を下げて1・5度に引き戻す次善のシナリオを追求すべきだとした。

 また、一時的な超過でも、気候変動に脆弱(ぜいじゃく)な開発途上国などで飢餓や避難民などが増えるおそれがあるとし、「平和と安全に対する脅威を増幅させる」と警告した。

 一方、再生可能エネルギーへの投資や新規導入量が、化石燃料を大きく上回る現状は「反撃の材料」になるとし、「欠けているのは政治的勇気だ」と参加国首脳に呼びかけた。【ニューヨーク八田浩輔】

毎日新聞

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