子供の栄養失調深刻 停戦発効から1カ月、ガザの人道危機改善せず

2025/11/10 20:16 

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 パレスチナ自治区ガザ地区の停戦発効から10日で1カ月が経過したが、ガザの人道危機は大きく改善せず、一部の子供は今も深刻な栄養失調に陥っている。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の清田明宏保健局長は「戦争による危機は全く終わっていない」と懸念を示す。

 ガザでは今年3~5月にイスラエルが支援物資の搬入を停止させたため、食料危機が深刻化。餓死者が後を絶たず、国連は8月に北部ガザ市と近郊で「飢饉(ききん)」が発生したと認定した。

 国連は、ガザでは1日にトラック500台の支援物資が必要だと指摘。イスラエルは停戦後、必要な支援物資の搬入を認めていると主張する。だが物資調達を担う国連世界食糧計画(WFP)などによると、物資は必要量に全く届いていないという。子供の急性栄養失調の割合は8月に15・8%に達し、その後は減少しているが、10月末時点で10%程度にとどまる。

 特に最大都市ガザ市を含むガザ北部は人道状況が改善していない。イスラエルはガザ南部の検問所を2カ所開放したが、北部は依然として閉鎖しており、物資配布に支障が出ている。

 ロイター通信によると、ガザの和平計画を進めたい米国も今後、支援物資の搬入、監視に関与するという。

 医療面も課題は多い。世界保健機関(WHO)は6日、1万6500人以上がガザ域外での緊急治療を必要としていると発表した。ただ、エジプトとガザの境界にあるラファ検問所は閉鎖されており、隣国エジプトへの搬送は難しい。

 ガザでは多数の現地職員を要するUNRWAが医療、教育に貢献しており、現在も39の診療所で1次医療を提供しているが、医薬品不足で包帯すら患者に提供できない時もあるという。

 6日に東京都内で会見したUNRWAの清田局長は、診療所で7月に診察した生後11カ月の女児、シラちゃんの例を紹介した。当時は急性栄養失調状態にあり、上腕部の太さが清田氏の親指と同じくらいの7・5センチしかなかったという。

 現在は一定程度回復したが、それでも健康な状態にはほど遠い。清田氏は将来、栄養失調の後遺症が出る可能性もあるとした上で、「ガザの飢饉は間違いなく人災であり、防がなければいけなかった」と厳しい表情を見せた。【古川幸奈】

毎日新聞

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