ミラノ五輪で活躍の韓国スノボ界 躍進支える61歳の僧侶ボーダー

2026/02/17 16:39 

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 ミラノ・コルティナ冬季オリンピックで、韓国勢がスノーボードで金メダルを含む複数のメダルを獲得している。韓国はスピードスケートなど氷上競技の強豪とされてきただけに、国内でも関心が高まっている。なかでも、選手を支える一人の僧侶が注目を集めている。

 「子供たちはボードに乗ると束縛から解放されて常に自由を感じると言っていた。その『自由』というものが気に入った」。京畿道(キョンギド)南楊州(ナムヤンジュ)市にある曹渓宗の奉先寺の住職、ホサン僧侶(61)は、聯合ニュースに自身がスノーボードに関わることを決めた理由についてこう語った。

 60歳を過ぎた今も僧衣姿で上級コースを滑りこなすホサン僧侶は、20年以上前にスノーボード大会を立ち上げ、選手の育成に尽力してきた。「ダルマ杯」と呼ばれるこの大会は2003年に始まり、国内で最も長い歴史を誇る。ワールドカップ出場条件のポイントが得られる大会として認定されたこともある。

 今回、スキー、スノーボードの韓国勢として初の金メダルを獲得した女子ハーフパイプの崔ガオン(17)選手や、女子ビッグエアで銅メダルだったユ・スンウン選手(18)などは、この大会に出場経験のある「ダルマキッズ」だ。

 韓国メディアによると、ホサン僧侶がスノーボードに出合ったのは、約30年前、寺の近くにあるスキー場で無事故の祈願を依頼され、スキー場を訪れたのがきっかけだった。当時、スノーボーダーはストリート系のファッションで、髪を染める人も多かったことから良い印象を抱いていない人もいた。だが、滑っていると「自由を感じられる」との子供たちの話を聞き、「仏教でも生死解脱の自由を追求し、私たちも『大自由人』になるために出家したので共感できた」と振り返る。

 修行の合間をぬって子供たちと一緒に練習を重ね、時には海外の合宿に同行した。韓国のスノーボードの設備は不十分で海外での大会や合宿に参加するための遠征費用がかかる。生計を立てるのが難しく、アルバイトや日雇いの仕事をしながら活動する人も多かった。若手選手からさまざまな苦労を聞く中で、賞金1000万ウォン(約107万円)が出る国内大会の開催を思いついた。

 大会費用は他の僧侶にも協力を求め、用意した。参加する僧侶は年々増え、16年からは曹渓宗の団体が主催している。こうした経緯から、「仏教界はスノーボード界の最大のスポンサー」と評する韓国メディアもあるほどだ。

 その後、徐々にスノーボードの評価が高まり、育成支援をする企業も増えた。14年からは財閥のロッテグループがスキーとスノーボードの選手強化の支援を始め、その規模は現在に至るまで約300億ウォン(約32億円)に上るとされる。

 だが、韓国での練習環境はまだ不十分だ。崔選手は記者会見で「韓国にはハーフパイプが一つしかなく、それも完璧でない」と指摘。「日本には夏でも訓練できる施設があり、韓国にもそのような環境が必要だ」と吐露した。ホサン僧侶も韓国メディアの取材に「みんな本当に頑張った」と語った上で、国内の環境整備の必要性を強調した。【ソウル日下部元美】

毎日新聞

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