「紀州戦争」、嵐の前の静けさ? 覇権争う重鎮2人の影はどこへ
和歌山県の岸本周平前知事の死去に伴う知事選(6月1日投開票)が15日、告示される。これまでに、岸本氏の下で副知事を務めた宮崎泉氏(66)が無所属での立候補を表明し、自民、立憲民主、国民民主、公明の各党が推薦を決定。共産党は党県副委員長で元和歌山市議の松坂美知子氏(68)の擁立を発表した。岸本県政の継承か刷新かを争点に、両氏の一騎打ちとなる公算が大きい。
県政界では長年、保守の2大政治家が影響力を誇示し、「紀州戦争」とも呼ばれる権力争いを続けてきた。自民党の元幹事長、二階俊博氏と参院幹事長を務めた世耕弘成氏(現衆院議員)だ。
2022年11月の前回知事選では、世耕氏の主導で県連が元官僚の擁立を決めたのに対し、選挙の実動部隊で県内21町村長でつくる県町村会が岸本氏の推薦を決定。県連は「どんでん返し」の末、岸本氏推薦で収拾し、岸本氏は立憲、国民民主などの推薦も受けて初当選した。町村会が岸本氏推薦で動いた背景には、二階氏周辺による首長らへの働き掛けがあったとされる。
◇記者会見の裏で
あれから2年半――。自民派閥の政治資金パーティー裏金事件で二階氏は政界を引退し、世耕氏も党を離れた。しかし、今回の知事選を巡っても、2人の「影」が見え隠れする。水面下で何が起きていたのか。
前日に公舎で倒れているのを発見された岸本氏が死去した4月15日午前、自民県連の歴代幹事長らはひそかに集まり、議論を進めていた。議題は知事選。関係者によると、前回推薦した岸本氏の路線を引き継ぐには「現職副知事の宮崎氏が適任」との意見でおおむね一致したという。
当の宮崎氏はその頃、県庁で記者会見に臨んでいた。岸本氏の死去を県民に説明するとともに、自らが知事の職務代理者に就いたことを発表した。自民県連の意向を伝えられた当初、宮崎氏は首を縦に振らなかったという。葬儀などの対応に奔走する中で、徐々に「岸本知事の遺志を引き継ぐのが自分の使命」と出馬の意思を固めていった。
◇またも町村会が異論
そうした流れの中で、今回も存在感を発揮したのが県町村会だ。「首長の意見を聞いてもらっていない」(岡本章会長=九度山町長)と自民県連の方針に異を唱え、独自候補の擁立を模索した。元副知事を含む複数の県幹部OBに出馬を打診し、1人が前向きな姿勢を示したという。
「岸本さんから直接副知事に指名された宮崎氏と、岸本さんの就任前に退職した県OB。有権者の目には、どちらが『岸本後継』と映るだろうか」。町村会と県連との調整役を担った元副知事の「進言」もあり、町村会は4月30日、宮崎氏の推薦を発表。今回は町村会側が折れる形となった。
◇参院選控え、うごめく権力
自民県連内部でも綱引きが行われていた。二階氏周辺の勢力が宮崎氏を担ぎ出そうとひそかに動き始めた15日、世耕氏に近い県議も宮崎氏を推す方針を公言。県連内では「(離党した)世耕氏に知事選の主導権を握られるのではないか」との懸念も飛び交い、宮崎氏側が払拭(ふっしょく)に走る一幕もあった。
知事選後に控える参院選を見据え、火種はくすぶり続ける。夏の参院選和歌山選挙区(改選数1)で、自民は二階氏の三男、伸康氏(47)を擁立する。昨秋の衆院選では和歌山2区で、くら替え出馬した世耕氏に敗れた。一方、世耕氏に近く、今回、伸康氏との公認争いに負けた前有田市長の望月良男氏(53)も離党届を提出し、無所属での出馬を表明している。衆院選に続き、再び激しい保守分裂選挙が見込まれる。
自民県連が役員会で宮崎氏の推薦方針を決めた直後、世耕氏に近い重鎮県議は会場を背にこうつぶやいた。「宮崎さんが岸本さんの後継としてふさわしいことに異論はない。ただ、(宮崎氏が知事選で)伸康氏と一体となって選挙運動を進めるなら、わしらは動かんで」
◇継承か刷新か
県では、白浜町のレジャー施設「アドベンチャーワールド」で多くのファンに愛されてきたジャイアントパンダ全4頭の中国への帰国が決まり、観光振興の岐路に立つ。人口減少には歯止めがかからず、懸念される南海トラフ巨大地震への対応も急務だ。
宮崎氏は岸本氏が力を入れてきた学校給食の無償化など子育て支援の充実や、中小企業振興による人口流出の防止を訴える。一方、松坂氏は、南紀白浜空港(白浜町)が4月1日付で緊急時の自衛隊使用などを想定した「特定利用空港」に指定されたことを「軍事利用にもつながる」と問題視、攻勢を強める。【駒木智一】
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