現金給付「否定」が一転「消費減税より効果的」 どう見る首相の変節
「消費減税よりはるかに効果的だ」
自民党が夏の参院選で公約に盛り込む現金給付を巡り、石破茂首相の発言が波紋を呼んでいる。
国民に一律2万円を給付することの是非に加え、そもそも首相自身が給付に否定的だったからだ。
この「変節」をどう見るべきか。
政治学者の五野井郁夫・高千穂大教授は「首相の言葉がどんどん軽くなっている」と指摘する。【聞き手・金志尚】
◇バラマキとしか言いようがない
――石破首相が18日、訪問先のカナダで、現金給付は減税より効果的だと発言しました。
◆毎月のように上がっていく物価に対して、2万円を一度給付するだけでは当然、効果は限られます。
消費税減税の方が中長期的には人々の懐に優しいのは明らかですから、給付の方がより効果的とは言えません。
例えば貧困家庭のみを対象に10万円支給するといったやり方であれば一定の効果を見込めるかもしれませんが、広く薄く給付するやり方は「バラマキ」としか言いようがありません。
選挙目当てとの批判も免れないでしょう。
◇支持率向上は「難しい」
――実際、SNS(交流サイト)では「給付金のほうがよいという人はいない」などと批判の声が渦巻いています。仮に「選挙目当て」だとしても、むしろ逆効果なのでは。
◆2009年に当時の麻生太郎政権が国民1人あたり1万2000円(65歳以上と18歳以下は2万円)の定額給付金を支給しました。
この時もバラマキ批判はありましたが、世論調査を見ると(支給後に)支持率が上向いています。そういう例が、あることはあります。
ただ、その後も新型コロナウイルス禍での一律10万円給付など、何度か国民への現金給付は実施されてきましたが、必ずしも支持率の向上にはつながっていません。
少しでも懐が温かくなるのならありがたいと考える人も、もちろんいると思います。
ですがこれまでを踏まえると、単発の給付で有権者の信頼を得られるかと言えば、難しいのではないでしょうか。
◇あまりに振れ幅が大きい
――石破首相は11日の党首討論では「検討している事実はない」と現金給付を否定していました。ところがわずか2日後、公約に盛り込むことを表明し、さらに今回の「効果的」発言に至ります。発言が大きく変わることにも戸惑う人が少なくありません。
◆石破さんは首相になる前、信念を持った政治家として一定の筋を通すというイメージがあり、それが人気の源泉だった部分があります。
そこにほれていた人たちからすると、自民党内の声や選挙対策を優先したように見える今回の姿に非常にがっかりしたと思います。
恐らく岸田文雄前首相や菅義偉元首相が在任時に同じような対応をしても、ここまで失望はされなかったはずです。現実の政治を考えて妥協したのだろう、と受け止められる余地が多少なりともあった。
でも、石破さんに多くの人が求めたのはそこじゃない。理想を語り、理想を実現するための突破力だったはずです。
もちろん首相の立場や政権運営の現実を反映して発言が変わることは理屈としては理解できます。
とはいえ、あまりにも振れ幅が大きい。今回の件もそうですが、前言をあっさり翻すぐらいなら最初から言うべきではありません。
◇まるで風見鶏
――首相になる前に言っていたこととの隔たりが目立つ、とも指摘されています。
◆もともと少数派閥を率いていたので、石破さんは自民党内に仲間が少ない。
ですから、やりたいと思っていたことを(首相就任後に)できないのはある意味、仕方のない部分があります。ただ、今の石破さんはまるで(周囲の状況によって態度をころころ変える)風見鶏です。言ったことと実際の行動が食い違えば、首相の言葉はどんどん軽くなっていきます。
選択的夫婦別姓を巡る法案も今国会で採決されず、継続審議になりました。
石破さん自身は首相就任前、導入に前向きな姿勢を示していましたが結局、過去の首相と変わらない。一議員時代は理想論を語っていただけに、その分「裏切られた」と感じる人も多いと思います。
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