現金給付案に嫌悪感、期待と不安が交錯する消費減税案
現金給付か消費減税か――。参院選で物価高対策が焦点の一つとなっている。与党は全国民一律2万円などの給付案を掲げるが、世論調査では有権者の評価は低い。背景には政策効果への疑問だけでなく、「バラマキ」「不公平」など「選挙前の給付」に嫌悪感が広がっている現状があるようだ。これに対し、野党が主張する消費減税を支持する声は多数を占めるものの、財政の悪化や社会保障サービスの低下などへの懸念は根強く、期待と不安が交錯している。参院選を通じ、各党とも有権者の疑問・不安に応える議論が求められている。
◇現金給付「評価しない」が圧倒
自民、公明両党が参院選公約に盛り込んだのは、物価高対策として国民1人当たり一律2万円を給付し、子どもと住民税非課税世帯の大人には2万円をそれぞれ加算する案だ。だが、毎日新聞が6月28、29日に実施した全国世論調査では、この案を「評価する」とした人はわずか17%にとどまり、「評価しない」が66%と圧倒した。
回答理由を自由に書いてもらったところ、「1回だけの給付では継続して生活が楽にならない」(30代女性)「目先しか解決しないし、貯金に回して終わる」(30代女性)という政策効果への疑問や、「こんなに値上げしている生活に2万円では足りなさすぎる」(50代女性)「10万円でも、現状の景気状況では評価しない」(60代男性)など金額への不満が並んだ。
◇バラマキと不公平
ただ、最も目立ったのはバラマキ批判だ。「お金配りで票を買う。自民党のために税金を取られている」(40代男性)「完全に選挙前のばらまき。票をカネで買っている。公職選挙法に違反している」(30代男性)など辛辣(しんらつ)な批判が続く。「政権を担っているのだから選挙に関わらず、すぐに配ればいい」(30代女性)や「選挙前の今(6月末)でもできるはずですよね?」(30代女性)などと給付を参院選後にしたことに疑問を持つ意見もあった。
もちろん「少しでも家計の助けになる」(70代女性)「値上がりした食費をカバーできる」(80歳以上女性)など歓迎する回答もあったが、少数にとどまっており、「バラマキへの嫌悪感」が勝っている状況だ。
石破茂首相(自民党総裁)は消費減税について「たくさん消費するお金持ちほど減税額が大きい。本当にそれでいいのか」などと批判し、給付案の有効性を訴えている。しかし、世論調査では逆に「給付案こそ不公平だ」との指摘も多い。
特に反発が強いのは非課税世帯への加算だ。「住民税非課税世帯に上乗せするのはおかしい。きちんと納税している私たちも生活が大変なのは同じだ」(40代女性)という指摘や、非課税世帯は年金受給者が多いため「現役世代をないがしろにしている。高齢者に多くばらまき、選挙の票集めなのは明らか」(50代男性)などの意見が相次いだ。また、収入が少なければ資産があっても非課税世帯となることもあり、「住民税非課税は実質の経済状況を反映していない」(50代女性)との不満も上がっていた。
◇現金給付より消費減税
一方、野党各党は一部で給付の主張もあるものの、原則1年間の食料品の消費税率0%(立憲民主党)や時限的な消費税率一律5%への減税(国民民主党)など消費減税の必要性を訴えている。
調査で物価高対策として「給付金案」と「消費減税案」のどちらがいいか尋ねると、「給付金案」が16%に対し「消費減税案」は55%で多数を占めた。給付金を「評価しない」層では69%、「評価する」層に限っても26%が給付金案よりも消費減税案を支持しており、有権者に消費減税への期待が高まっているようだ。
消費減税は「減税の方が毎回の買い物の際に実感できる」(70代男性)「消費税は生活費に直結しているので、給付金より現実的で変化が見えやすい」(40代女性)「一時金だとそれで終わり。毎日の生活が大事です」(70代女性)など、日々効果を実感しやすい側面が支持されているとみられる。
特に要望が多いのは食料品などの生活必需品の減税。「食べ物や生活必需品など買わなければ生きていけないのだから減税すべきだ」(30代女性)「食べなきゃ生きていけないのだから、食品だけでもと思う」(40代女性)といった切実な訴えが続いた。
このほか「減税の方が物価も安くなるし、むしろモノが売れて税収が上がる」(50代男性)「一時的でもよいので減税して消費を押し上げてほしい」(30代男性)など、経済効果を期待する声や「全国民が平等に受けることができる」(30代女性)など平等を強調する意見もあった。
◇社会保障への不安
しかし、財源不足への懸念はぬぐい切れていないようだ。「財源を考えると現実的ではない」(60代女性)「財源が明確でない」(60代男性)などの意見が相次いでおり、野党は税収の上振れ分や政府の基金切り崩しなどを財源に上げているものの、有権者から信頼を得ているとは言いがたい。
特に有権者の社会保障への不安は大きい。「税収が減少し、結局は将来の増税や社会保障が低下する」(50代男性)「社会保障の財源となる消費税に手を付けるべきではない」(50代男性)「消費税減税はうれしいが、その分の社会保障がなくなるようでは困る」(50代女性)――。政府は消費税を「社会保障の安定財源」としており、安易な消費減税に対する批判は根強い。
「支持政党はない」の70代男性は「給付金は貯蓄に回るだけ。減税は社会保障など財源の確保を慎重に考えるべきだ」と書き込んだ。給付案、消費減税案の「どちらもいいとは思えない」との回答は28%。約3割が与野党の給付金案や消費減税案に納得していないことになる。物価高は有権者にとって生活に直結する大きな関心事だ。参院選で支持を得るには、与野党ともにそれぞれの物価高対策の意義や財源の裏付けを有権者に示していく必要があるだろう。【野原大輔】
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