農水省、食糧法改正案の方向性提示 コメ政策の関連規定を見直し
農林水産省は16日、自民党の会合で来年の通常国会に提出する予定の食糧法改正案の概要を示した。鈴木憲和農相がコメ政策の原則に掲げる「需要に応じた生産」の促進を定めるほか、政府備蓄米の一部を民間業者にも担ってもらう「民間備蓄制度」の創設や、民間業者が保有するコメの在庫量などの流通実態の把握強化などを盛り込んだ。
昨年夏以降のコメ不足と価格高騰で騒動を引き起こした反省を踏まえ、コメ政策の関連規定を見直した。
現行法には2003年の改正時に採用していた「生産調整」の文言がある。国は18年産から農家に対する生産数量目標の配分をやめて減反政策を廃止したが、生産出荷団体らが作成する「生産調整方針」の農相の認定は残っていた。近年はその認定件数が減って形骸化しているとして生産調整方針の規定削除を決めた。
その代わりに「政府は需要に応じた生産を促進すること」や、「生産者は需要に応じた生産に主体的に努力すること」などを定める。また国や自治体に対し、需要に応じた生産を可能とする情報提供の責務などを規定する方向性も示した。
こうした見直しを減反政策廃止後にせず、なぜ今になって法改正するのかについて、農水省の幹部は記者団に「そういう機会がなかったから」と説明した。
また「需要に応じた生産」という考え方は、生産数量目標の配分をやめた後も、政府が需給見通しを産地に示すなどして生産抑制に誘導してきた経緯から、「事実上の減反政策」との批判がある。政府はそうした見方についても「生産者が自らの経営判断で作付けを行っている」などと否定している。法律に明記されれば、コメの生産政策は容易に転換ができなくなる。
備蓄米政策では、需要の増加による生産量の不足時にも対応できるよう備蓄の目的を見直す。現行法は生産量の減少による供給不足のみを想定した規定となっていた。昨夏以降の需要の増加による生産量不足に対して、迅速な放出の判断がしづらかったという。
民間備蓄は民間のコメ流通業者らに対し、保管に際して「義務備蓄量」の確保を求める。民間業者には通常のコメ取引で一定量を保管して出し入れしている「民間在庫」と区別して管理することは求めず、備蓄分の「量」の維持を義務化する方向で検討する。
そのため、政府の放出指示は義務備蓄量の引き下げによって実施する方向だ。従わない場合は勧告や公表を検討する。
コメの流通実態の把握強化については、食糧法に基づき届け出を求めているコメの出荷・販売事業者の対象を、加工業者や中食・外食業者らにも広げる考えなどを示した。【中津川甫】
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