シドニー銃撃の「英雄」はイスラム教徒男性 支援の寄付2億円超
オーストラリア東部シドニーのボンダイビーチ近くであった15人死亡の銃乱射事件で、地元警察は16日、容疑者の親子2人が事件の約1カ月前、フィリピンに渡航していたと発表した。豪公共放送ABCは捜査関係者の話として、軍事訓練を受けるのが目的だった可能性があると報じた。
警察によると、現場近くに駐車されていた親子の車両からは、過激派組織「イスラム国」(IS)の手製の旗2枚が見つかったという。
ABCは、2人が11月初めにフィリピンの首都マニラを訪問していたと報道。マニラから南部に移動し、同月末に豪州に帰国したという。英公共放送BBCによると、フィリピン入国管理局は、父親と息子がそれぞれインドと豪州のパスポートを使用し、目的地を南部ミンダナオ島のダバオと申告して入国したと明かしたとしている。
ミンダナオ島では2017年、ISに忠誠を誓う武装勢力との戦闘を受けて戒厳令が敷かれたことがあり、その後もIS賛同者が潜伏しているとされる。
事件を巡っては、発砲していた容疑者の一人から銃を奪った男性が「英雄」として称賛されている。オーストラリアのアルバニージー首相は16日、病院で男性と面会し、「あなたの勇気は感動的だ」とその行動に謝意を示した。
豪メディアによると、男性はシリア出身のイスラム教徒で、06年に豪州に移住した。事件後、容疑者とISとの関係が報じられると、交流サイト(SNS)では、イスラム教徒や移民への憎悪をあおる投稿が相次いだ。シドニーのイスラム教徒墓地に豚の頭が置かれる嫌がらせも報じられた。
こうした中、イスラム教徒の男性が被害拡大を防いだ事実は広く共有され、国内外で注目を集めている。男性を支援する動きも広がり、クラウドファンディングの寄付総額は1日で200万豪ドル(約2億円)を超えた。【バンコク国本愛】
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