長生炭鉱遺骨、DNA鑑定へ 日韓首脳が発表 関係者ら喜び、課題も

2026/01/13 19:47 

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 戦時中に水没事故があった長生炭鉱(山口県宇部市)で見つかった遺骨を巡り、日韓両政府は13日の首脳会談後の共同記者発表で身元特定のためのDNA型鑑定を共同して進めることを明らかにした。地元の市民団体「長生炭鉱の水非常(みずひじょう)を歴史に刻む会」や遺族らが独自の調査で成果を上げ、政府と粘り強く交渉してきたことが事態の進展につながった。

 刻む会はこれまで日本政府に対し、早期の遺骨収容を繰り返し求めてきた。だが政府は「遺骨の場所が不明」「坑道の安全性が確認できない」などとして消極的な姿勢だった。

 国が動かない中、刻む会は2024年9月、独力で坑道の入り口を発掘した。クラウドファンディングなどで得た資金で調査を続け、昨年8月には犠牲者のものとみられる頭蓋(ずがい)骨などを収容、日韓両国にDNA型鑑定の実施を要望してきた。2月に国内外のダイバーによる調査を計画しており、それまでにDNA型鑑定が行われない場合、独自で鑑定を始める方針も示していた。

 犠牲者183人中181人の氏名が判明しており、韓国側と合わせて計80人余分のDNA型のデータを保有していることなどから、鑑定が行われれば身元が特定される可能性が高い。

 16年に成立した「戦没者遺骨収集推進法」は遺骨収容を「国の責務」とするが、事実上、収容は軍人や軍属が中心だ。厚生労働省は長生炭鉱での犠牲者を「戦没者ではない」とし、同法の規定外としてきた。今回、両国が政府として対応する姿勢を示したことで「民間人戦争被害者」の取り扱いを見直す契機となることも期待される。

 刻む会の井上洋子代表は、「政治的決断が下されたことと受け止める」と評価。「これを端緒に、鑑定だけでなく遺骨返還も見えてくる」と喜んだ。その上で、日韓両政府と刻む会によるプロジェクトチームを作り、両国の支援で遺骨収容へ進むことも要望した。

 ただ、日本政府関係者によると、今回の進展は韓国側が世論の高まりを受けて主導したという。「韓国側ではプライオリティーが高い遺骨の鑑定について前進したのが今の到達点」と指摘。別の政府関係者も実務は韓国側が中心となる見方を示した。共同記者発表では、刻む会などが求めている政府による遺骨収容については言及がなかった。この点は依然として「民間任せ」となる可能性もある。

 また遺族が高齢化しており、早期の鑑定着手が求められる。【栗原俊雄、日下部元美、宇多川はるか、綿貫洋】

毎日新聞

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