寒中選挙「ふざけんな」 地吹雪も警戒、山形の選挙カー運転手ら憤り
強風で雪が巻き上げられる自然現象「地吹雪」が吹きすさぶ季節を迎えた山形県庄内地方。36年ぶりの真冬の解散に伴う選挙戦に、各陣営の選挙カーの運転手らから「ふざけんな」と憤りの声が上がっている。寒波の襲来に警戒を強めながら支持拡大を目指し、慎重にハンドルを握る日々が続く。
横殴りの吹雪の中、凍結して黒っぽいアイスバーンになった路面を、選挙カーがそろそろと走り抜ける。雪道の運転に慣れた人でも、一年で最も厳しい「寒中」は特に気を使う。移動時間は夏場の1・5倍はかかり、天候次第で時間の見通しもつけにくい。4年ごと、正月明けに告示される真冬の県知事選の経験を積んでいるベテランでさえ神経をとがらせている。
路面だけではない。この時期の選挙は「厄介だ」と不満を漏らすのは、酒田市のタクシー会社社員で、ある陣営の運転手を務める男性(57)。窓を開ければ車内に吹雪が吹き込み室温が急降下する。同乗する候補者や運動員の体調を考えると最小限にとどめたいが、背に腹は代えられないとこぼす。
鶴岡市によると、29日午前8時半現在の市内最大の積雪量は、山間部の旧朝日村大網地区で207センチ(前年同日比55センチ増)。日本海側で比較的雪が少ない旧温海町の温海川地区でも145センチ(同22センチ増)に上ったことから、今月9日、旧朝日村と旧温海町に「地域豪雪対策本部」を設置し、大雪による交通障害などに警戒を呼び掛けているところだ。
大雪に伴う除雪に人手が駆り出される影響で、予定していた運転手の確保ができず、1人で乗り切らねばならなくなったと話すのは別の陣営の運転手で、鶴岡市の会社経営男性(70)。真冬の選挙になった1990年の衆院選でも運転手を務めた。同じ選挙区内とはいえ、大雪の中を50キロ以上離れた新庄市まで車を走らせ、心臓が凍る思いがしたという。「ただ、昔と比べて車の性能が格段に良くなっているのが救い」と話す。
運転手らが最も警戒するのが、特有の自然現象「地吹雪」だ。強風によって雪が巻き上げられることから、庄内地方では「雪が下から降る」とも言われる。選挙カーの運転歴20年で、鶴岡市で代行業を営む別の陣営の運転手(56)は「肉眼で見える範囲だけでなく、危険を予測する『心の目』をフル稼働させている」と明かす。運転技術に加え気象状況をこまめにチェックしながら乗り切る構えだが、「こんなてこずる時期に解散なんて、雪国で暮らす人の気持ちが分かってない。ふざけんな、と思うよ」。【長南里香】
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