合計170歳のダブルスペア 活力の源は「勝負を楽しむ気持ち」
卓球「混合ダブルス」のペアを組むと、合計年齢が170歳になる夫婦が栃木県日光市にいる。沼尾憲彌(けんや)さん(86)と啓子さん(84)だ。共に競技歴は70年を超え、80代半ばの今も、卓球漬けの日々を送る。2人の活力の源は、競技を始めた10代の頃と変わらない「勝負を楽しむ気持ち」だ。【池田一生】
2人は60代以上が中心の地元の卓球クラブに所属し、週に数回練習に汗を流す。クラブが無い日は、卓球を始めたいというシニア向けの教室で指導も行っている。全国の代表が実力を競う「ねんりんピック」にはそれぞれ10回以上出場し、鳥取県であった昨年の大会にも、選手と監督やコーチを兼任して参加した。憲彌さんは県勢の男性最年長だった。啓子さんは「夫婦で、この年齢まで(卓球を)やっているのは珍しいと言われる」と笑う。
2人は中学時代に競技と出会い、憲彌さんは今市高、啓子さんは真岡女子高で腕を磨き、インターハイにも出場した。卒業後はそれぞれ実業団で活躍し、社会人時代に参加していた大会を通じて仲を深めた。選手として引退後も卓球を続け、それぞれクラブを立ち上げた。
退職後は、通常の球よりも直径が大きい「ラージボール」の教室を県内各地で開き、海外へも指導に赴くなど、普及活動にも力を入れた。子、孫、ひ孫も卓球に取り組み、現在、小学1年のひ孫には自宅の卓球台で教えている。
憲彌さんは「健康には卓球が一番だ」と言い切る。「プレーしていると目や頭も活発になるし、足腰も絶えず動かすから衰えにくくなる」のだという。憲彌さんが教えている教室では、定年後の趣味として卓球を始めてみたいと参加する人が多くいる。そんな人には「長寿の秘訣(ひけつ)だよ。始めるのに遅いということはない」と声を掛けている。「多くの人が卓球と出会い、活力ある老後を過ごしてほしい」というのが願いだ。
「卓球をやめようと思ったことはない」と夫婦は声をそろえる。加齢とともに体力の衰えは感じると言うが、啓子さんは「この年齢になっても、負けたら悔しいし、勝った時は本当にうれしい。やめられない」と語る。
2人は今年も多くの大会への出場に意欲を見せる。憲彌さんは身体の切れを良くしようと現在減量にも励む。「卓球で勝ちたいという気持ちは、中学生の頃と今も全く変わらない。スポーツで得る喜びに年齢は関係ない」と憲彌さん。2人はこれからも生涯、ラケットを握り続けるつもりでいる。
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