不妊・不育治療と仕事を両立するには? 研修動画を東京都が配信

2025/01/20 11:30 

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 働きながら不妊症、不育症の治療を進めるには、職場の理解が不可欠だ。働きながら治療を受けられるよう職場の理解を促そうと、東京都が都内の企業向けにオンラインの研修動画を無料で1月末まで公開している。【中嶋真希】

 不妊症とは妊娠を望む男女が避妊をせず性交しているのに、一定期間妊娠しない状態のこと。不育症とは妊娠はするが、流産や死産を繰り返して子を得られない状態のことを指す。

 不妊症は頻繁に通院する必要があることや、治療の副作用による体調不良が課題だ。焦りや落ち込みなど精神的にも不安定になる。また、不育症は流産・死産後の母体の回復、子供を失った精神的な苦痛から立ち直るまでに時間を要する。仕事との両立は、容易ではない。

 研修動画は、治療の概要▽仕事との両立▽人事労務管理の三つから成り、計2時間。当事者が直面する問題などを紹介し、上司と当事者がコミュニケーションをしっかり取ること、テレワークやフレックスタイム勤務の活用などを呼びかけている。

 ◇支援制度ある企業は少ない

 不妊治療と仕事の両立を支える制度を設けている企業は少ない。

 厚生労働省が2023年に実施した「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」によると、休暇制度など「不妊治療を行っている従業員が受けられる支援制度等がある企業」は26・5%と、3分の1にも満たない。

 調査では、不妊治療をしたことがある人のうち、半数以上は仕事と両立しているが、10・9%は退職し、7・4%が雇用形態を変更していることがわかった。

 また、両立している人でも「通院回数が多い」「精神面で負担が大きい」「待ち時間など通院にかかる時間が読めない、医師から告げられた通院日に外せない仕事が入るなど、仕事の日程調整が難しい」といった理由から仕事と治療の両立に難しさを感じていると回答があった。

 ◇昨年度は500人が視聴

 都は18年度から治療と仕事を両立できる職場づくりを進める企業を支援する「働く人のチャイルドプランサポート事業」を開始。相談体制や休暇制度などを整備する企業に奨励金を支給するなどしてきた。研修動画の公開も、この事業の一環だ。

 都の事業を担当する、女性のキャリアアップを後押しする相談窓口「はたらく女性スクエア」(渋谷区)の松井るな子所長によると、これまで働く女性たちからは「不妊治療と仕事の両立はできるのか」「転職したいが、不妊治療を続けられるかどうか」といった不安の声が寄せられていたという。

 昨年度も同様の研修動画を公開しており、500人が視聴した。今年度は、12月末時点で申し込みが400人と昨年度を下回っており、松井さんは「より多くの企業に関心を持ってもらうことが課題」と指摘する。

 そして「治療を支える制度が整っていなかったり、制度があっても使えなかったりといった課題がある。治療がどのようなものか知ってもらい、仕事が続けられる環境が整うよう、より多くの方に正しい知識を持ってもらいたい」と呼びかけている。

 申し込みは30日まで。配信は31日で終了する。対象は、都内に本社もしくは事業所を置く企業の経営者、人事労務担当者としているが、人事担当でなくても受講できる。詳細はホームページ(https://www.c-kensyu.metro.tokyo.lg.jp/)へ。

毎日新聞

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