長島の記憶、動画で ハンセン病の歴史など紹介 海外発信も 岡山
岡山県瀬戸内市は、ハンセン病の歴史や療養所の入所者の暮らしを紹介する動画「記憶を受けつぐ旅~岡山県瀬戸内市・長島に残るハンセン病の歴史」を制作した。字幕付きの約26分間の動画は、市内の小中学校の人権学習で活用するほか、動画投稿サイト「ユーチューブ」の市公式チャンネルにも公開されている。同市は療養所の世界遺産登録を目指しており、英語版も作り海外にも発信する。【今東理恵】
市東部にある周囲16キロの長島は、その美しさから平安時代より多くの歌に詠まれ、江戸時代には岡山藩池田家の馬場として利用された。
ところが、明治末期からハンセン病患者の隔離政策を行ってきた国は、1930年に最初の国立ハンセン病療養所として島に長島愛生園を、38年には邑久光明園を作った。ハンセン病は感染力が弱く43年には特効薬が開発されたが、96年のらい予防法が廃止されるまで隔離政策は続いた。
社会に広まった誤った認識は、入所者とその家族への偏見と差別につながり、多くの入所者は完治後も社会や家族のもとに帰ることができず、現在も122人(7日現在)の入所者が暮らしている。
動画では、穏やかで美しい長島の景色と、二つの療養所内の学校や住居跡、遺骨の引き取りを拒否された多くの元入所者をとむらう寺院などの建造物などを巡り、ハンセン病の歴史と隔離されながらも懸命に生きた入所者たちの暮らしぶりを伝える。また対岸に暮らしてきた近隣住民の証言も紹介された。
制作を担当した市ダイバーシティ推進室の田中綾乃さん(26)は「隔離された人々を身近に感じてもらうために暮らしの断片を紹介した。誰もが分かりやすい動画になったと思う。実際に島を訪れて、ハンセン病問題とは何かを考えるきっかけになれば」と語った。
動画は、市ホームページからも見ることができる。
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